女子校を覗きたい衝動にかられたら、『さくらん』で我慢して。
- 『さくらん [DVD]』
- 土屋アンナ,蜷川実花
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嫉妬、陰口、足引っ張り、ヒエラルキー。会社も学校も女子ばかりが集まると、こんなことが日常茶飯事と耳にしますが、果たして本当でしょうか。とか、気になる人は、女子校出身の蜷川実花さんが監督、女子校出身のタナダユキさんが脚本を手掛けた、江戸版女子校映画『さくらん』を観てみましょう。もちろん物語はフィクションですが、監督も脚本も女子校出身者ということで、女子校感においてはかなりリアルに違いありません。女子校出身の辛酸なめ子さんの著書『女子校育ち』と比較してみると、やっぱり『さくらん』が本物だったことがわかったのです。
まず主人公のきよ葉(土屋アンナ)へのいじめについて。菅野美穂演じる先輩女郎の粧ひからは「人より多くもらうものは人より多く憎まれる」と言われるように、人からよく憎まれ、女郎仲間に嵌められたりしています。でも彼女は美人で強気で華やかで、いじめられるよりはいじめる方という感じがします。が、『女子校育ち』に書かれている女子校でのいじめ事情から、彼女がまさにそういう宿命を背負った女子であることがわかります。「地方の公立などでは、目立って可愛い子はヤンキーにでも入らない限りいじめの標的になってしまう」らしく、さらに変わり者はつまはじきにあいやすいらしい。目立って可愛い変わり者であるきよ葉、完全に当てはまっています。
また、安野モヨコさん(共学出身)による原作(未完)とは大きく異なるのが、夢見がちなラストです。個人的には好きではないですが、女子校育ちならではの感性を一貫して表現しているという意味では納得できます。きよ葉が身を置く玉菊屋の店番・清次との恋は、身の回りの数少ない男である男性教師に恋して駆け落ちしてしまう女子校生を思わせますし、突如として少女漫画のようなお花畑に切り替わる感じも、いかにも恋に恋してる感が出ています。ちなみに『女子校育ち』には「女子校恋愛脳チェック」というのが付いているんですが、最初の設問が「今も心のどこかで白馬の王子様を待っている」。そういうことです。
というわけで『さくらん』、女子校を疑似体験&女子校育ちに対する理解を深めるにはもってこいではないでしょうか。女子校を覗きたい男子は、これで我慢してみてください。
(文=鬱川クリスティーン)