もやもやレビュー

いくつになっても恋する気持ちは変わらない。『やさしい嘘と贈り物』

やさしい嘘と贈り物 [DVD]
『やさしい嘘と贈り物 [DVD]』
マーティン・ランドー,エレン・バースティン,エリザベス・バンクス,アダム・スコット,ニック・ファクラー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 主人公を演じるのは、共にオスカー俳優のマーティン・ランドーとエレン・バースティン。年老いたロバート(マーティン・ランドー)は、アメリカの小さな町で、スーパーに勤務しながらひとり寂しく暮らしていました。そんなある日、ロバートはメアリー(エレン・バースティン)という老婦人と出会い、恋に落ちます。彼の孤独だった日々が色づき始めます。

 年老いた2人の恋模様は、観ているこちらまで思わずにやけてしまうほど。やっぱり、いくつになっても恋っていいものなんだなぁと。特にロバートがかわいい。デートを成功させたくて職場の仲間にあれこれ相談したり、会話の中で彼女を褒めようと頑張ってみたり。メアリーの娘から、母があなたに好意を持っていると聞かされて、浮足立ってみたり。そして、二人で訪れたクリスマスパーティで、メアリーと親しげに話す男性に嫉妬まで。おじいちゃんになっても、恋する気持ちは10代と変わりません。

 印象に残ったのは、クリスマスプレゼント交換のシーン。ロバートはメアリーにたくさんのプレゼントを用意していて、好きに開けていいよと言い残し、コーヒーを淹れに行きます。一人部屋に残されたメアリーが開けてみたその中身は、なんと拳銃でした。立ちすくむメアリー。それは、ロバートが自身への贈り物として用意していたものでした...。数日前に彼女がロバートの元に現れる前の、自殺をも考えた彼の孤独や苦悩が痛いほど伝わります。どんな境遇にあっても恋すると人は変われるんですね。というか、孤独だったからこそ、人のぬくもりや好きな人の愛ある言葉に、より一層ときめくのかもしれません。

 そして、物語の最後に、タイトルにある「やさしい嘘」の種明かしがあります。でも、そのお話はぜひ本作を観てからで。それはそれは恋って素敵だと心底思えるものですので。私もプレゼント交換する相手が欲しいです。

(文/森山梓)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム