もやもやレビュー

オリンピックとは関係ないけど走りたくなる。『tokyo.sora』。

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 かなり出遅れ気味の話題ですが、2020年東京オリンピック開催が決定しましたね。ただ東京つながりというだけですが、今回は2002年の映画『tokyo.sora』を紹介します。
 本作は、東京で暮らす6人の女の子を描いたオムニバス。「マシェリ」などのCFディレクターを経て、2006 年に『好きだ、』を、今年4月に『ペタル ダンス』を発表した石川寛監督による映像は、儚く優しく美しい...のですが、本作に登場するのは、人生うまくいってない系の女子たちです。

 たとえば、美容師を目指すが何年も見習いから卒業できず、ランパブでバイトしている雪(井川遥)。雪と同じランパブで働く小説家志望の葉子(板谷由香)。テッシュ配りのバイトで生計を立てている売れないモデル(本上まなみ)。胸の小ささに悩む美大生。中国人留学生は、言葉の壁にぶつかり好きな人に話しかけられずにいる。なおかつみんな孤独です。

 東京という街は怖くって、「東京に行きさえすれば何者かになれる」という東京マジックに毎年、多くの上京者が陥ってしまいます。結果、何者にもなれなかった者は静かに絶望していく。たくさんのぼんやりした不安(芥川)の上に成り立っているのが、東京の一つの顔でもあると思います(よね?)。バイトのコ(高木郁乃・元ジャングルスマイル)が働く喫茶店のマスターは言います。「生きていることをやめたいと思ったことはある? 僕は毎日思っている」と。

 でも、この映画は東京で起こるちょっとした幸せも描いてます。たとえば、面識のなかった雪と葉子が偶然居酒屋で居合わせ、そのまま朝まで飲み続けたあと、白々とした空の下を走り抜けるシーン。

 希望の数だけ絶望があり、それでも人は生きていかなきゃいけないわけで。だけど絶望のなかでもこういう小さな希望を見つけられるのが、東京のまた別の顔でもあるわけで。だから明日も生きようと思えるし、あわよくば早朝に一緒に走ってくれる友だちが欲しかったりもするし、なんならそのまま来年の東京マラソンでも目指してくれ! 今年のエントリーは終わっちゃったから! というか、走らなくていいから普通の友だちが欲しいです。

 なんとなく疲れちゃった週末、明け方に観たくなる映画です。

(文/ペンしる子)

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