もやもやレビュー

『舟を編む』を見て、言葉を仕立てるひたむきさに思い至った

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 TwitterやLINEなど、ともすれば安易に言葉を吐きがちになってしまう今の環境の中で、滲み出る言葉を「伝わる形」にすることの重要性を『舟を編む』に教わりました。

 うまく自分を活かせない営業部から辞書編集部へと配属になった、名前の通り「マジメ」だけが取り柄の馬締光也(松田龍平)。「今を生きる辞書」を標榜してスタートとした辞書『大渡海」の編纂へと関わることになった馬締は、水を得た魚のごとく、言葉を見つけては、それに意味を与える地道な作業の虜に。馬締とは正反対のお調子者の西岡(オダギリジョー)や、言葉の神のごとく辞書編纂への情熱を燃やす監修者の松本先生(八千草薫)。そして下宿先に同居する事になった大家さんの孫娘、香具矢(宮﨑あおい)。膨大な言葉と共に、馬締は徐々に彼等との関係を深め、辞書作りへと邁進していきます。

 スポットが当たりにくい「辞書」というお仕事の裏側(膨大な量に及ぶ用例採集など)を覗き見れると同時に、本作の魅力となっているのが、辞書作りを通して馬締の「言葉を使う姿勢」と「周りの人との関係」がシンクロしながら深化していく点です。
 圧倒的にキャラの違う西岡と、不器用ながら仲を深めていこうと努力するところや、会ったその日に一目惚れしてしまった香具矢へも、口下手ながら届く言葉を使って思いを伝えようと奮闘するところ。言葉を伝える愚直な努力こそが周りの人との壁を払い、風通しを良くしていくコツなのかも、と馬締の行動を見て感じました。率直な気持ちも勿論ですが、それを相手に伝わる様に仕立てることも同じくらい大切なことだと思います。

 ちなみに、この『舟を編む』の劇場パンフレットは、120頁以上もある超大作です。馬締たちがこだわり抜いた大渡海の「ぬめり感」のある用紙が実際に付いていたり、オリジナルの脚本がまるごと掲載されていたり。作品と辞書への愛に溢れたものになっていて、初めて映画のパンフレットで感動を覚えました。「パンフレット大賞」なるものがあれば、と想像してしまうほどの出来映えです。再上映等でお手に取る機会があれば、ぜひ。

(文/伊藤匠)

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