もやもやレビュー

『Dolls』を観て、好きと言わない美学を学んだ

Dolls [ドールズ] [DVD]
『Dolls [ドールズ] [DVD]』
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 北野武が2002年に発表した映画『dolls』。3組の、それぞれカタチの違った愛を描きます。

 1組目は、結婚を約束した彼女を捨て、出世のために別の女性と結婚しようとした男が、結婚式当日に前の彼女の元へ戻り、ふたりで旅に出るという物語。

 2組目は、ヤクザの親分である男が、昔再会を約束した女性に会いに行く話。

 3組目は、交通事故で左目を失い、引退してしまったアイドルのことが好きな追っかけが、姿を見られたくないというアイドルのために自分の目を潰してしまうという物語。

 3組それぞれに共通しているのが、最後、男が死んでしまうこと。2人の関係に希望が持てるような出来事があった直後のことです。

 かなり残酷な物語なのですが、ヨージヤマモトが手がけた衣装や、日本の四季の表現が美しく、映像の力を見せつけられます。

 ところで、気になったのが、この3組、お互いの気持ちはわかってるのに、一回も誰も好きという言葉を発しないんです。

 ここに日本人独特の間を読む感性が出ているなと。日本人なら好きと言わずにいかに好きを伝えるか。そんな美学を学ベる映画でもあります。

(文/神田桂一)

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