もやもやレビュー

読書感想文は正直に限ると思った『世界にひとつのプレイブック』

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 高校生の時、読書感想文が大の苦手でした。というよりも、強制的に本を読ませられるのが嫌でたまりませんでした。それに、周りの人が平然とAmazonのレビューや、ネットから感想文をパクってくるのにも辟易。結局、高校3年間一度も感想文のたぐいは提出しなかった覚えがあります。
 そんな少し苦い思い出を和らげてくれたのが、『世界にひとつのプレイブック』です。

 妻の浮気を目撃してしまったことで、精神を病んでしまったパット(ブラッドレイ・クーパー)。退院後も、自宅を勝手に売り払い、出て行ってしまった妻に未練タラタラな彼ですが、気持ちだけは非常に前向き。なぜかというと、前向きに行動する様子が妻に伝われば復縁出来ると考えているから。「恋愛を引きずりやすい男」の象徴のようなパットに共感する男性は、僕を含めて意外と多いのではないかと思います。

 そんなパットの、「前向きでありながら後ろ向き」という困った心をぶち壊しにかかるのが、友人夫妻の妹であるティファニー(ジェニファー・ローレンス)。彼女自身も夫を亡くしており、深い気持ちの欠落から最初は反目し合う二人。ですが、ティファニーのパートナー役としてパットがダンスのコンテストに出場することになり、練習を通して徐々に2人は気持ちを通わせていきます。

 最後は幸福感溢れる作品へと昇華する本作。ですが、パットの失恋のひきずり方が余りにも激しすぎて、個人的にはこちらの方が印象に残ってしまいました。なんせ、教師だった妻が教材として使っていたヘミングウェイの『武器よさらば』の結末が悲劇的だったことに怒り、深夜に両親をたたき起こして「いかにこの小説がくそなのか」を語りまくる始末ですから。

 でもこのパットのむちゃくちゃな行動、「感想を述べる姿勢」としては正しい気がしました。
本に書かれていることって、なんだか偉く思えるものです。それが「ヘミングウェイ」ならなおさら。「さぞかし人生の役に立つことが書いてあるに違いない」と思ってしまうはずです。そんな高尚な雰囲気につられて、自分とは合わないのに分かったふりをするのは、なんか違う気がします。それよりも、パットのように「大嫌い」と正直に言う方が、生身の感情が表れた、血が通ったものであるように感じました。

 感想は自然と出てくるものであって、誰かの目を気にしたり、強制されるものではない。そんな当たり前のことに気付かせてくれたパットに感謝したく思います。

(文/伊藤匠)

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