もやもやレビュー

忘れた頃にみたくなる名作。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

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 肌寒さに震えながら、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を手に取ってみました。花火は、下からも横からも見たことはありません。家でかすかに聞こえてくる音で妄想するか、見ても橋や木に邪魔されるタイプです。

 本作は、岩井俊二監督がテレビドラマとして作ったものでしたが、テレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞を受賞。翌1994年に、映画として劇場公開されました。当時、若手のテレビドラマ監督・脚本家であった岩井監督の評価と知名度を一気に上げ、映画製作に進出するきっかけとなった作品です。

 打ち上げ花火を巡って繰り広げられる小学生最後の夏休み。夜に花火大会が行われるその日は学校の登校日で、プールでは典道(山崎裕太)と祐介が50mを競おうとしていました。審判は二人が思いを寄せるなづな(奥菜恵)。彼女は勝った方を花火デートに誘うつもりでいたのでした...。

 この映画の見所は、奥菜恵の反則級の可愛さ。大人にはなりきれていないけれど、少女というほど幼くはなくて、妙に色っぽさもあって。女の私でもうっとりしてしまう魅力があります。対する典道役の山崎裕太を始めとする男子たちが、見た目からしてほんとに幼い。思えば小学生の頃は、女子の方が発達や成長も早くて、どんどん大人っぽくなっていきました。いつまでもガキのまま、置いてけぼりの男子は、女子の変化にきっとドキドキしてたんだろうなぁ。山崎裕太演じる典道から、そんな男子の心情が痛いほど感じられます。

 なづなと典道、二人きりの夜のプールのシーンがあります。両親の離婚により新学期には転校してしまうことを隠し、「新学期会えるの楽しみだね」と言うなづな。......近くにいるようで決して届くことのない存在。何も知らないはずの典道の小さな背中が、そう悟っているように見えて、とても切なくなりました。

 ちなみに、若かりし頃の麻木久仁子が教師役だったり、蛭子さんや田口トモロヲがチョイ役で出ていたりと、奥菜恵以外の楽しみもいっぱい。また、男子たちが好きな人の名前を叫ぶシーンがあるのですが(こういうのも幼い!)、ある男子が叫ぶ「セーラームーン!!」に、時代も感じることのできる一本です。

(文/森山梓)

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