もやもやレビュー

『おと・な・り』を観て、インスタントコーヒーをやめようと誓った。

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『虹の女神Rainbow Song』『ニライカナイからの手紙』などで知られる青春映画の名手、熊澤尚人監督の2009年の作品。
都会のアパートで、隣に暮らしながらも一度も顔を合わせたことのない男女(主演にV6の岡田くん、相手役に麻生久美子)が、お隣の部屋から聞こえてくる日常の様々な音を介して、何気なく惹かれあっていくラブストーリーです。

その音とは、例えば、コーヒー豆を煎る音やフランス語の練習をする声、帰宅した際になるドアの音など、あげればきりがないほど。そして、そのどれもが優しい映像と音(楽)と空気感に包まれています。それはなぜかと考えてみました。

岡田くん演じる聡は、人気モデルの専属カメラマンという忙しい日々を送りながらも本当は風景をとりたいという葛藤をしています。麻生久美子演じる七緒もまた、フランス留学を控え、フラワーデザイナーを目指しながら花屋でアルバイトに励んでいます。
夢を追いかけながら人生の岐路に立つ三十代のふたり。その日々を懸命に生きる様が、日常の音と共に、観ている私たちの胸に熱く響き渡ります。

 しかしながらこの映画、冷静に考えるとひくシーンも多々。話し声や、ときにすすり泣く声までもが筒抜けで、プライバシーどころではありません。また、たびたび登場するのが、物語のキーワード(キーソング?)となっている「風をあつめて」をくちずさむシーン。泣いている七緒を慰めるために聡がくちずさんだり、2人一緒にくちずさんだり。それも壁越しに! 

とはいえ、慌ただしく過ぎる毎日の中で、つい見過ごしがちな日常のささいな音やモノ・コトに関心を持って、大事に丁寧に生きるのっていいなぁとつくづく思わされます。ついスマホやネットを見てしまう習慣をちょっと変えてみると、違った豊かさが手に入るかもしれません。まずはインスタントコーヒーをやめてみようと思います。

(文/森山梓)

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