もやもやレビュー

『ヒミズ』を観て、悩んだらとりあえずランニングしようと思った。

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 悩みがつきません。最近は、大学の長すぎる夏休みの使い方に思い悩んでいます。結局映画を観たり、飼い犬とおもちゃの取り合いをして一日を過ごしてしまうわけですが。

『ヒミズ』の主人公、住田くん(染谷将太)も悩みがつきない青少年です。なぜかというと、両親が「クズ」だから。金を無心するアル中の親父と、男と遊ぶことしか考えていない母親。「平凡に生きること」をなによりも望む住田少年は、暴力で彼の希望を粉々にする父親をとうとう殺してしまい、『スターウォーズ』のアナキンのごとく自らの暗黒面へと転がり落ちて行きます。

 そんな彼を狂乱的に愛するのが、同級生の茶沢さん(二階堂ふみ)。彼女もまた、娘のために首吊り台をこしらえる母親を持つなど、しっちゃかめっちゃかな家庭環境に置かれています。

 こんなどうしようもない環境下にある2人が、禍々しい現実を見据え土手の上を走り出すラストシーン。ここで初めて住田くんは、後ろ向きではない未来に向けた言葉を彼自身に叫びます。

 この「ただ走りながら叫ぶ」という行為に、悩みへの解決法を見出した気がしました。身体にも「おれは必死に悩んでるんだ!」ということを思い知らせてらないと、自分の奥底に沈んでいる考えは出てこない。そんな風な「頭と体のバランスの重要性」に思い至ったわけです。

 そんな事を考えてランニングをし始めようとしたんですが、考えたら家の近所は閑静な住宅街。大学生であるがゆえの「単位どうすりゃいいんだよ!!」という悩み。こんなの叫びながら走ってたらお巡りさんに声を掛けられること必然です。うぅ、また悩みが・・・取りあえず普通に走ってきます。

(文/伊藤匠)

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