もやもやレビュー

『ヒーローショー』を観て、高校時代の制服の献身を知る。

ヒーローショー [DVD]
『ヒーローショー [DVD]』
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 高校時代、学校の制服があんまり好きではありませんでした。デザインとかではなく、「一年中夏服or冬服という二択のみしかない」という事にそこはかとない束縛を感じていました。
 そんな制服が「意外と影で役立っていたのかも」と思わせてくれたのが『ヒーローショー』という映画です。

 ヒーローショー(デパートの屋上でやるチビッ子向けのやつ)のバイト仲間であるノボルに彼女を寝取られた剛史。ブチ切れた剛史はショーの最中にも関わらずケンカをふっかけますが、それでも怒りは収まらず、チンピラ仲間を集めて再度ノボルをめった打ちに。ここで終われば良かったものの、ボコボコにされたノボルは兄貴の友達である元自衛隊を引き入れ、剛史達への逆襲を開始。抗争は泥沼化していき、ついに殺人事件が・・というのが大まかなお話。井筒和幸監督が実際にあった事件を元にしているということで、恐怖感もひとしおな作品となっています。ブルブル。
 そんな恐ろしい展開に一役買ったのでは、と思ったのが、両者の服の差異。

 僕は今大学生なのですが、大学にいると、「同じような服を着た人たち」が自然と仲良くなっているように思います。ワンピースと細いベルトのコンサバ女子のグループ、チェックかアーガイル柄のワイシャツの眼鏡男子たち。見た目の大半を占める服装によって「自分と合うひとなのかどうか」を、自分を含めてジャッジしているような気がします。

 今回の事件で言えば、最初のケンカの時の「ヒーローと悪役の服装の圧倒的な違い」が火に油を注いでしまい、雪だるま式に悪化する事件を作ってしまったのではないかと思うのです。
 そう考えた時、思い出したのが高校の時の制服でした。全員が同じ「個性のない」制服着ていたことが、感情機敏な少年少女を大人しく机に座らせる一因となっていたのでは、と思いました。(そういえば、不良っぽい子たちは制服を着崩すことから、手始めに個性を見せつけようもしていた気がします)
 自分を縛っているものは、同時に自分を助けてくれているのかもしれません。

(文/伊藤匠)

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