もやもやレビュー

『帰ってきたドラえもん』は、「小っちゃい頃のおもちゃは断捨離しない方がいいよ」と教えてくれる。

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 部屋に本が溢れています。本棚の中に入りきらず、本棚の上のスペースに平積みし、そこにも置ききれない本は床の上で黙々と斜塔を作り上げています。困った。
 そんな状況は本に限らず、いろんな物が知らぬうちに部屋に居座っています。服であったり文具であったり、小さい頃に買って遊んでいたおもちゃもそんな物の一つ。
『帰ってきたドラえもん』はそんなおもちゃたちを、ちゃんと手元に置いておく重要性を教えてくれます。

 この映画は『ドラえもん のび太の南海大冒険』の前に流された30分ほどのショート・ストーリーなんですが、ファンの間では本編を超える人気を誇る名作中の名作です。その人気の理由は、いつもはドラえもんに頼ってばかりいるのび太君が見せる、泥臭い勇姿にあります。

 ドラえもんが未来に帰ってしまうことを知り「安心してドラえもんに帰ってほしい」という思いから、ジャイアンに自ら対決を挑むのび太君。ボロボロになりながらも、ドラえもんへの思いからジャイアンに挑み続ける彼の姿は、ファンならずとも感涙せずには見られないはずです。僕なんかこの文書きながら泣きそうです。

 そんなのび太君の、ドラえもんへの揺るぎない思いを起こさせるアイテムとなったのが、押し入れのおもちゃ箱にしまってあった「だるまのおもちゃ」です。おもちゃを見て一緒に遊んでくれたおばあちゃんの姿を思い出し、去っていくドラえもんへも同じように悲しむことしか出来ていない自分に気づくのび太君。彼にジャイアンに一人で立ち向かう強い意志を与えたのは、他ならぬこの古びたおもちゃであると僕は感じました。

 無邪気に遊ぶ事しかしていなかった頃に傍にあったおもちゃは、懐かしい思い出とともに、自分の思いの芯に気づかせてくれる物なのかもしれません。僕も久しぶりに、押し入れの段ボールのふたを開いてみようかと思います。

(文/伊藤匠)

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