もやもやレビュー

「恋はあせらず」を直球で教えてくれる映画『苦役列車』

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 他人の成功は教科書にもなりますが、時として煙たく、聞きたくない自慢話に転化することがあります。特に恋愛が関わると、その傾向に拍車がかかるように感じます。おそらく「付き合えた、やったぜ!」というエピソードは、自分の状況とのギャップが見えやすく、怒りのボルテージをわかりやすく刺激する可能性が高いためではないかと思います。

 そういった他人の恋愛成功話はどうもな・・という方に勧めたいのが『苦役列車』です。
 芥川賞受賞作が原作の映画であり、今回直後に作者の西村賢太さんが「面白い映画ではない」と一蹴した事でも話題になったこの映画。

いや、面白いですよ。

 恋愛に関してここまでためになる映画を初めて見ました。なんでためになるかというと、森山未来さん演じる北町貫太が焦りまくって恋愛に失敗する様が丁寧かつ獰猛に描かれていて、そこから「焦っては成功しないぞ、てか破滅するよ」ということが痛いほど伝わってくるからです。

 行きつけの古本屋でバイトをしている桜井康子(前田敦子)に恋心を抱いた貫太の行動は計画性のかけらもありません。一刻も速く彼女のウチへ行こうという下心のみで貫太はアプローチを開始します。結果、康子にどんどん距離を置かれる貫太(突然、手を舐めたりしたら嫌われるに決まってます)。

 一見どうしようもない奴に見える貫太ですが、そんな彼の人間臭く不器用な部分に共感する自分がいる事もまた事実です。貫太の失恋の原因である「焦りすぎ」は、男女問わず、失恋の経験がある人には痛いほど分かるものではないでしょうか。そういえば僕も高校時代、それまでただの友達だった子に「2人でディズニー行こうぜ!」と誘い、いきなりの好意に引かれて距離を置かれてしまった経験があります...違う意味で夢の国になってしまいました。

 レンタルビデオ屋さんでは「邦画か行」でもなく「山下敦弘監督作品」でもなく、「恋愛(奥手な男性向け)」のコーナーに置いて欲しい、そんな作品です。(そんなコーナーないか。ビデオ屋さんにも文脈棚が欲しい!)

(文/伊藤匠)

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