もやもやレビュー

『堕天使のパスポート』を観て、スーパーマンみたいな人との出会いを望む自分に気づいた

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 もし、勤務先のトイレで人間の心臓を見つけてしまったらどうしますか? 私なら速攻悲鳴をあげます。いやむしろ、立ちすくんで何もできないかも......。

 オドレイ・トトゥ主演の『堕天使のパスポート』では、そんな衝撃シーンがありました。第一発見者は、オドレイの同居人でもあり、同じホテル勤務のアフリカ人オクウェ。彼は、ホテルの一室のトイレで見つけた心臓をビニール袋を使って素手で、取り出していました。

 オクウェがあまり動じずにいられたのは、理由がありました。彼は、ホテルのフロント夜勤係でもあり、昼はタクシー運転手でもあり、元医者でした。実に色んな顔を持っています。また不法滞在者という一面も。オドレイと恋人かとも思ったのですが、お互いに好意は持ちつつも付き合ったりはしていないよう。ただ、トルコからの移民で、同じくパスポートを持たない不法滞在者という弱い境遇にある彼女を守りたいと思っています。

 オドレイが移民局の怖いおじさん達に目をつけられて追われたりひどい目に合ったりして、職や住まいを転々としても、オクウェが住まいを紹介したり逃がしたりいつも助けてあげます。

 極めつけは、こちら。冒頭にお話しした心臓がみつかった背景は、ホテルの支配人が臓器売買をして金儲けをしている超悪い奴だったからで、その支配人に、パスポート欲しさでオドレイは肝臓摘出を願い出ます。で、なんとまあ支配人に処女を奪われてしまいます。そこでオクウェは、支配人をだまして、支配人の肝臓を取り出しちゃいます。ホテルの一室でも、完全に手術仕様にしてしまいます。手術終了後、難なく支配人の肝臓を取引相手に渡して、臓器売買も成し遂げちゃいます。

 その足で支配人からゲットしたパスポートで二人仲良く脱出するのかと思いきや、実は訳あって祖国に妻に先立たれ姉に預けている娘がいるとのこと。そりゃないよオクウェと思いました。でも、最後まで信念を貫き、人に対して愛情持ったふるまいをする紳士なオクウェだったから、オドレイも好きになったのだろうし、彼が最後に成し遂げたことへの協力者たちの存在も彼の人間性あってなのだとどこまでも、出来たお人なのだと思わされました。そんなスーパーマンみたいな人、どこかにいないでしょうか。

(文/森山梓)

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