『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』を観て、存在感のある寡黙な男に怒られてみたいと思った。
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じめじめする梅雨らしい天気が続きますね。憂鬱な気分を少しでも払拭するのに、イギリス映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』がおすすめです。
監督はマドンナの元夫としても知られるガイ・リッチー。ブラット・ピット出演の『スナッチ』で有名ですが、その前作にあたる本作に感動したことで、ブラピは『スナッチ』への出演を決めたそう。それくらい面白いのです。
複雑に絡まったストーリーが徐々に繋がっていく様や、音楽やユーモアにのせたスピード感のある展開は、本当に目が離せなくなります。ただし、基本的にギャング映画なので、俳優たちは強面だし、えぐいシーンもちらほら。店を息子の借金の担保にされてしまう、父親役のスティングの凄みはかなりのものです。
ことの発端はカードの腕前に自信のあるエディが仲間3人から集めたお金で、ギャングでありポルノ界の帝王ハリーに賭けを挑みますが、ハリーのイカサマにより多額の借金をさせられます。返済期間はたったの一週間。
ハリーの手下から、息子が借金を返せなかったら、お前の店(バー)を引き渡せと脅されるスティング。しかし迷うことなく「このバーを息子のために手放す気は全くない」と言いのけます。「手放せば息子は助かるんだぞ」と念を押されても、「失礼のないように丁寧な言葉で言う。ハリーに伝えろ。くたばれと」。
返済期日まであと三日というタイミングでそう言い切れる度胸。まばたきもせず相手をキッと睨みつけ、何があっても揺るがないその姿勢。かっこいいです。凄みがあります。スティングの存在感は半端ない。寡黙な男には存在感があります。
エディたちは、隣人ギャングの盗難計画に便乗して、盗んだお金で借金返済を企てるのですが、その過程で何人もの人が殺されます。その中にはハリーも。そして最後は警察に捕まるのですが、エディや仲間は無実として釈放されます。その際のスティングの息子への一言がまた渋い。「命があって幸運だ。今回の幸運を生かせよ」と。存在感のある男の一言はどうしてこうも心に響くのでしょう。こういう人になら怒られてもいいかも。というより、いや、はい。怒られたい!です。
(文/森山梓)