「夢は大きい方がいい」はあながち間違ってないと思わされた。『砂漠でサーモン・フィッシング』
- 『砂漠でサーモン・フィッシング [DVD]』
- ユアン・マクレガー,エミリー・ブラント,クリスティン・スコット・トーマス,アマール・ワケド,トム・マイソン,ラッセ・ハルストレム
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必死になれるものが何ひとつない、つまらない大人になりました。そんな大人に観てほしいのが、『砂漠でサーモン・フィッシング』。タイトルのまんま、砂漠で鮭を釣ろうとする人たちのお話です。
投資コンサルタントのハリエット(エミリー・ブラント)は、砂漠の国・イエメンの大富豪から、「砂漠で鮭釣りをしたい」という依頼を受けます。するとこの案件が、外務省後援目的の国家プロジェクトに発展。水産学者のアルフレッド(ユアン・マクレガー)は、なかば脅しで担当を押し付けられてしまいます。アルフレッドは当然「無理だ」と一蹴しましたが、実はこのときイエメンではすでにダムが完成しており、水が確保されているという状況だったのです。「理論上はできる。でも無理だ」と言うアルフレッドに対し、「理論上できるんなら、やりましょう」と押し切るハリエット。結果、アルフレッドがどうせ無理だろうと吹っかけた高額な費用が国から降り、砂漠で鮭釣り計画がスタートします。
たしかに、この話を耳にした誰もが「無理www」と失笑してしまうような、実現不可能かつくだらない計画です。砂漠→水ない→釣りは無理、というシンプルな話ですから。でもこの映画では、優秀な大人の男女、アルフレッドとハリエットが全力で奔走し、ときに互いの悩みを吐露しながら、本気でぶつかりあうんです。そして作中、終始「こんな金持ちの道楽のために...」と揶揄され続けた依頼主の大富豪でしたが、実は彼には趣味の魚釣りに留まらない大きな野望があり、「信じれば、夢は実現する」と目を輝かせます。もう超純粋。こんなまっすぐなキラッキラ感を持ち続けていられれば、きっと人生は楽しいことだろうと思いました。負けた。
近年のビジネス書には、「実現可能な小さな目標を一つずつクリアしていきましょう」と書かれてあると聞きます。でもね、想像の範囲内でいても人は自分の限界値を上げられないし、それが「自分」になってしまうと思うんです。だから固定概念や経験則にとらわれずに、ここはいっそバカになって、砂漠で釣り級の目標をあえて立ててみるのも手かもしれません。映画の登場人物たちがそうだったように、恋や友情(場合によっては富も)などを含む結果諸々は、必死になった分だけあとからついてくるものだと思うから。
(文/ペンしる子)