もやもやレビュー

熱を持った作品と恋に落ちるヨロコビを思い出した。『ナルコ!』

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 皆さまごきげんよう。放っておくとチョコレートがふにふにとなってしまい、食べる時に地団太な季節となりました。あらゆるものが「要冷蔵」の時季ということを忘れずにおきたいところです。

『ナルコ!』は「ナルコレプシー」の略で、時間や場所を選ばず突然眠りに落ちてしまう発作を起こす、珍しい疾患のひとつなのだそうです。主人公はこのナルコレプシーが持病の青年。仕事中もしょっちゅう卒倒・昏睡してしまうため、職に就いてもすぐクビになってしまいます。
 しかし彼はこれを逆手に取り、眠っている時に見る鮮明でドラマチックな夢をマンガに描くことを思いつきます。そこで発揮された才能は、周囲がこっそり出版し、大儲けしてしまうほど。

 彼の作品を開くと、そこはまるで生きている世界のごとく光や音が溢れ出します。誰の人生にもこういった熱を持った作品との忘れられない邂逅があるのではないでしょうか。映画のスクリーンに入り込んでしまったような錯覚。印刷された本の行間から溢れてくるきらめき。録音された音源から伝わってくるバイブレーション。高校や大学受験の合格発表を見に行った時、無機質な受験番号の羅列の中で自分の番号だけ光り輝いて見えたのも似た現象といえるかもしれません。ただの数字なのに。

 思春期の頃はやたらにいろんなものに感じ入ったものですが、オトナになってからもカミナリに打たれたみたいにシビれる作品に出会えるのって僥倖と言えるかもしれません(恋愛も一緒ですね)。こちらの感度を加齢とともに鈍らせず、豊かな出会いに備えておきたいところです。だって今この瞬間も、広い世界のどこかでは素晴らしい映画や本や音楽が生まれているに違いないのですから。

(文/小野好美)

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