もやもやレビュー

もう自分に嘘をつきたくないんだ!って人は、『スペル』です。

スペル Blu-ray
『スペル Blu-ray』
アリソン・ローマン,ジャスティン・ロング,ローナ・レイヴァー,ディリープ・ラオ,デヴィッド・パイマー,アドリアナ・バラッザ,サム・ライミ
東北新社
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 銀行勤務の主人公・クリスティンは、出世争いに勝ちたい一心で、おばあさんのローン延期を断ります。延期が認められないと家を失うことになるおばあさんは、必死で懇願。しかしクリスティンは却下。恨みを募らせたおばあさんは、その夜クリスティンに襲いかかり、恐ろしい呪いの呪文を唱えます!

 サム・ライミが『スパイダーマン』3部作の次に撮った本作。おばあさんの気色の悪さに敬礼したい。そんな作品です。おもむろに外した入れ歯から、ねっちょりネバネバの糸が引く。ヨダレベロベロのふがふがした口でクリスティンの顎をパクパクする。クリスティンの口の中に腕をズブズブズブーーーッとあり得ない深さまで突っ込む......などなど。やっぱりサム・ライミはすごい! なんかワンパターン! でも確実に面白いんですよね。

 そんなわけで、こんなに出世したのに何も変わっちゃいない感。サム・ライミのこの姿勢は、ほんとに尊敬に値します。売れても決してカッコつけないし、好きなことを封印しない。予算が増えただけで、やってることは何も変わらないんですから。それは『死霊のはらわた』3部作の3作目『キャプテン・スーパーマーケット』が、シリーズの中で最もバカバカしかったことにも象徴されています。改めて『スパイダーマン』も見直したくなります。

 出世によって持ち味を封印して我慢している人がいたなら、あるいは子どもができて親になりもうバカなことはやってられないなと思っている人がいたなら。この『スペル』を観てサム・ライミの生き様に思いを馳せて欲しい。大人だって、出世したってバカでいい。ものすごく気色悪い手で背中を押してくれる作品です。

(文/鬱川クリスティーン)

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