もやもやレビュー

『ロリータ』を観て、熟女が生き残る方法を知った。

ロリータ [DVD]
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 ズボンのチャックが開いていました。おばさんが指摘してくれました。ありがとうございました。
 というわけで、『ロリータ』を観ました。1962年にキューブリックが撮ったこの映画。文字通りロリコンの話ですが、性描写は一切出てきません。ちなみに冒頭で脚本家のクィルティが弾くショパンの『軍隊ポロネーズ』が素晴らしいです。

 教授のおっさんが、バケーションを過ごすために下宿探し。ひと通り部屋を見せてもらい「決めたら連絡するよ」なんてつれなく帰ろうとするも、庭先で日光浴をする美少女・ロリータに遭遇。即下宿を決めます。でもおっさんに恋をしたのはロリータのママ(未亡人)の方。おっさんは、ロリータ目当てで結婚することにします。しかし彼がこっそり書いていた日記(ロリータ賛美&ママへの暴言が中心)を見たママが逆上。家を飛び出したママは車にひかれて亡くなってしまいます。ロリータとふたりきりの生活を手に入れたおっさんは、ロリータへの粘着を極めていきますが・・・。ロリータ大好きなあまりにママをだましたおっさんは、結局ママと同じような気持ちを味わうことになります。

 原作では未亡人がもっと好感を持てる人物として描かれているそうですが、キューブリック版『ロリータ』の未亡人は風貌から言動から、共感しにくいキャラクターとなっています。実の娘のロリータに敵意をむき出しにしたり、明らかに気のないおっさんをしつこく誘ったり。要するにイタイおばさんとして描かれています。どう考えてもロリータに惚れるに決まってるキャラ設定なのです。

 若さへの憧れが強い日本人。アイドルも低年齢化、20歳超えたらおばさんなんて呼ばれたり、年を重ねることに価値が見いだされにくい環境です(単なる不満です)。で、美少女たちが主役な日本に生きる若くない女性にとって、この未亡人は反面教師。ピチピチ美少女と同じ土俵に上がっちゃいけない。比べられるような立ち位置をとってはいけない。別次元から切り込んでこそ、熟女の価値が発揮されるはずです。熟女こそ観て欲しい『ロリータ』です。

(文/鬱川クリスティーン)

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