もやもやレビュー

『あぜ道のダンディ』のおじさん二人に、理想の友人関係を見た。

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 かねてより、おじさんって生き物(生き方)に過剰に哀愁を感じがちです。やせ我慢をしていらない見栄を張り、責任感が異常に強い。そして、無駄に声がでかく、足が臭く、絡みづらい。少々乱暴ですが、おおまかにはそれがおじさんです。

 『あぜ道のダンディ』に、そんなおじさん二人の素敵な友情を垣間見ました。宮田と真田ははともに自転車であぜ道を走り、時にいじめられ、「カッコいい男」になることを誓った13歳からの付き合い。それぞれのダンディズムを身につけ、50歳になった。宮田は妻を早くに亡くし、難しい年頃の二人の子供との会話は噛み合わず、静かに配送業をこなす日々。真田は7年越しの父親の介護を終えたばかり。その間に仕事も妻も失っていますが、「最近じゃよくある話だ」と自分を鼓舞(でた! やせ我慢)。受験生二人を持つ宮田の境遇や身体を気遣うと「こんな時代におじさんをやっているんだ。後ろにも下がれなきゃ前にも進めない50歳、大変に決まってる!」と宮田は意味不明の逆ギレ&やせ我慢返し! 

 ある日、宮田は胃に不調を感じます。でも、でも、子供には言えません。だって、男だから! 親父だから!! そして、勝手に胃ガンだと思い込み、遺影を用意し、死ぬ準備を始めます。そうは言っても、宮田は不安でいっぱい。「弱音なんて吐くなよ」と励ます真田に「唯一の友達なんだから弱音くらい言わせてくれッ」とキレる宮田。そして数秒後には、「ごめん」と誤る宮田。もうダンディズムは何処へ? 心は揺れまくりです。でも、このシーンで、宮田に真田がいて本当に良かったと思いました。揺れ揺れでブレブレの心をそのまま出せる、ダンディという建前を取っ払って付き合える友人関係。

男の純情とか美意識って女の私には眩し過ぎて、つい茶化したくなったりもしますが、だからこそ心許し合える友情関係が輝くのだと思いました。

(文/森 亜紀子)

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