もやもやレビュー

初対面は大きくマイナスで始めた方がいい。『おしゃれ泥棒』

おしゃれ泥棒 [DVD]
『おしゃれ泥棒 [DVD]』
オードリー・ヘプバーン,ピーター・オトゥール,イーライ・ウォラック,ヒュー・グリフィス,ウィリアム・ワイラー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 おしゃれで、しかも泥棒。なんて素敵なタイトルなのでしょうか。おしゃれでも、アウトサイダーでもない自分は、タイトルだけでかなり引け目を感じてしまいます。というわけで、Facebookの好きな映画の欄に『死霊のはらわた』ではなく『おしゃれ泥棒』と書いておしゃれさをアピールしたいがために、観てみました。

 すごいのは、出会って数時間でキスまでいくテクニックです。オードリー・ヘップバーンの豪邸に、深夜、自称泥棒の男が不法侵入。ヘップバーンは銃を構えて警戒するも、話すうちにそれほど怪しい人でもないと判断し、テーブルに置いた銃が偶然暴発。男にかすり傷を負わせてしまいます。申し訳ないと手当を施すヘップバーン、さらに男に請われて泊まっているホテルまで車で送ってあげます。で、車を降りると、男が突然キス。しかも唇に!です! あまりに強引なキス。眠っている白雪姫にいきなりキスしてくる王子様くらい強引です。むしろ白雪姫の王子様、冷静に考えるとわいせつ罪で捕まる可能性あり! どうでもいいですが。で、キスされたヘップバーンはというと、まんざらでもない雰囲気です。なぜなんだ。

 出会って数時間でキス。この急展開には、やはりギャップという魔法の力が大きく影響していると思います。しかもこの場合のギャップは、それほど努力しなくても見せられるギャップです。不法侵入者というかなり大きなマイナスから、話してみると意外とまともな人であるというギャップ。マイナスからゼロへ上げるだけでいいのです。普通の人から入って、意外とすごいというところまで持っていくのは大変ですが、最悪な奴から始まって意外と普通まで持って行くのはそれほど難しいことではありません。同じギャップ幅を演出するなら、後者の方が圧倒的に演出しやすい!

 これからは、初対面最悪な奴でコミュニケーションに臨もうと思った映画でした。

(文/鬱川クリスティーン)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOK STANDプレミアム