もやもやレビュー

『わたしを離さないで』を観て、気分がどん底まで落ちた!

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 賞味期限を10日過ぎたヨーグルトを食べましたが、異変はないようです。日系イギリス人の作家、カズオ・イシグロによる同名小説を原作にした映画『わたしを離さないで』を観ました。監督はマドンナやジャネット・ジャクソンなどのMVを手がけたマーク・ロマネク。映像美もすごいです。薄曇ったような雰囲気の詩的な画は、どこを切り取っても完璧なくらい構図が緻密。まるでもう絵画のようです。何も前情報を仕入れずに観ると、初めは映像が綺麗なティーンの青春ものと勘違いしてしまうんですけど、あるタイミングでえええええっっっ!!!となるのも楽しいです。
 
 映画自体は2005年のものですが、時代設定は1960年代で、しかもSFです。映画の冒頭で、1952年に医療技術が革新的に進歩して不治の病が治療可能になり、1967年には人間の寿命が100歳を超えたという前提が説明されます。現在とか近未来を舞台にしたSFじゃなく、過去を舞台にしたSFなんです。で、物語が進むにつれて、どんな技術が開発されたのかが明らかになっていくんですけど。言ってしまうと、クローンです。犯罪者とか世の中のはみ出し者のクローンを作って、学校という名の養殖場で健康的に育てて、ある時期(だいたい20代くらい)がきたら臓器提供のドナーに使うという。生きたまま。そして死ぬまで取られます。でもクローンといっても、普通の人間とどこも変わらなくて、学校の授業も受ければ、恋をして失恋もするし、セックスだってします。ただ違うのは、人より早く死ぬというのが予め決まっていること。知らない人の命を救うために、犠牲になって死ぬんです。

 設定はSFですけど、病気や事故で早くに亡くなる可能性は誰にでもあるから、まったく関係ない世界の話じゃありません。むしろとても近くにある世界の話です。見終えたあとの気分はどん底です。猛烈に暗い気分と、毎日を大事に生きようという気分とが同時にやってきて、ものすごくモヤモヤしますから。特に最後、やっと結ばれた彼を臓器提供で失って、自分にも臓器提供の知らせが届いた主人公が「彼を知れただけで幸せだった」というセリフを言うんですけど、なんかもう、友達がいないから死にたいとか、完全に言えなくなっちゃいます。モテたいとか、WiiUほしいとか、仕事しないで楽したいとか、全部もうほんとにすみませんでした!と思うしかないです。それくらいキツイ、ラスト。たいしたことないように聞こえるのは、たとえが悪いからです。毎日の自分の生活が後ろめたい人には、ぜひ観てほしい映画です。

(文/鬱川クリスティーン)

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