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集団行動におけるキャラ付けの大切さを、映画『プリシラ』で学ぶ

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 集団行動が苦手です。子供の頃の修学旅行のとき、移動時に座るバスの席順に常に戦々恐々としていたのは、いまだに心に残るトラウマです。でも、大人になると、集団行動をしないわけにもいきません。そこで、その怖さを克服するために、「オカマ3人でバスで砂漠を旅する」という映画『プリシラ』を観てみました。

 砂漠のホテルでショーをするために、シドニーのドラァグ・クイーン3人組がバスに乗って旅に出ます。最初はなんとも陽気な門出だったわけですが、やはり旅にはハプニングがつきもの。田舎町のパブで楽しく現地の住民たちと飲み比べに興じたと思ったら、バスに「AIDS FUCKERS GO AWAY(オカマはどこかに行け)」とペンキで落書きをされてしまうし、砂漠の真ん中でバスがいきなり壊れるし、ヒッチハイクをしても怖がられて逃げられるし。もう散々です。「ゲイだからってことで、こんなにひどい目に遭うなんて...」と嘆く3人。しかし、いろんな嫌な目やがっかりする出来事に遭いつつも、お互いなんとなく目的地までたどり着くわけです。

 で、なかでも人見知りのみなさまにぜひとも注目してもらいたいのは、3人のなかの最年少であるフィリシア! 調整役であるミッチや姉御肌のパーナデットとは、年代も性格も雰囲気も趣味も全然違い、「ドラァグ・クイーン」という点以外はあまり共通点がありません。年上の口うるさいお姉さま方と一緒に狭いところで何十日も一緒にいるなんて、普通に考えたら絶対に嫌だと思うのですが、そんなことは全然厭わないフィリシア。むしろ、先輩方に「ダメ」と言われたことを片っ端から全部やるという、超マイペースぶり。たとえば、ドラッグをやって調子に乗って女装して遊びに行ったら、腕っぷしの強い男たちにレイプされかけたり。あるときは、先輩の本名(男の名前)を呼んで怒られたり。

 人見知りからするとありえない動きですが、そんな悪行にも関わらず許されてしまうのが彼女の不思議。でも、その理由は、確実に彼女の「変な人キャラ」だと思うんです

「小さいときに、入浴中のおじさんに『みんなに内緒でアレを触って』って言われたから、仕返しにおじさんのボールを排水管に吸い込ませてやったの! 救急車が来たわ!」と幼い頃のトラウマを笑いながら告白したり、「小さい頃にコンサート会場で拾ったABBAのウン●なの......。これは一生の私の宝物!」と、首からぶら下げた焦げ茶色の物体が入った瓶を誇らしげに見せてきたり。

「ABBAのウンコ」......。こんな事言われたら、もうこちらの負けです。誰もが「こいつに深入りするのはやめよう」って思いますよね。しかも、後は何をしても「あの人変な人だから、変なことしていてもしょうがないよね...」と許されてしまう。これから、なにか苦手な人たちと集団行動をする機会があったら、なにかのウン●を身に着けて「これが私の宝物!」と叫んでやろうと思います!

 あ、あと、ミッチを演じるヒューゴ・ウィーヴィングは、『マトリックス』シリーズのエージェント・スミス。人見知りでない方々も、エージェント・スミスの女装姿を見るだけでも、かなり価値のある1本です。

(文/ハリ山トゲコ)

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