もやもやレビュー

モテなくて良かったと心底思える、『エターナルサンシャイン』

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 恋人と喧嘩をして仲直りしようと思って会いに行ったら、なぜか彼女がまったく自分のことを覚えていない。実は彼女は、過去の嫌な記憶を消せるという「記憶除去手術」を受けていて、自分にまつわるすべての記憶を消し去ってしまったあとでした。なら僕もだ!と、手術に臨むも、彼女のことを忘れたくなくて手術中に抵抗する。そんな話。これを観るまで、主に顔がうざい(とても失礼です)などの理由からジム・キャリーが苦手でしたが、気持ちが変わりました。
 脚本が『マルコヴィッチの穴』のチャーリー・カウフマンですから、普通の恋愛ストーリーということはなく、ジム・キャリー&ケイト・ウィンスレットカップルの物語が、過去から現在に遡りながら逆回転で描かれています。観ているとある時、逆か!と気付きます。
 また劇中には、「忘却はよりよき前進を生む」(ニーチェ)、「真の幸福は罪なき者に宿る。忘却は許すこと。太陽の光に導かれ、無垢な祈りは 神に受け入れられる」(アレキサンダー・ポープ)といった名言も引用されていますが、最も心に残ったのは冒頭でジム・キャリーが言った「少しでも関心を示されると僕は恋に落ちる」という言葉です。すごくわかります......。子どもの頃、ちょっとかっこいい男子から「消しゴム貸して」って言われただけで、好きになっていたことを思い出します。私のこと好きなんだろうなと勘違いすることによって生まれる恋です。ただし、そのままモテるという経験がないと、大人になってもそのままです。私がそれです。こういうモテない感を、ジム・キャリーは全身でとても秀逸に表現しているのです。
 でも思いました。モテないというのもいいことだと。少ない恋の思い出が濃くなります。同じ恋でも煮詰まった出汁のように濃くなります。他人にはとるにたらない出来事も「人生で最高の瞬間だ」と思えるくらい、死ぬほど幸せを感じられます。だからモテないっていいことです。よかったモテなくて。
 恋人と別れてモヤモヤしてる人も、別れようかなとモヤモヤしてる人も、ただ単にモヤモヤしている人も必見です。

(文/根本美保子)

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