もやもやレビュー

格差社会もアリかと思えてくる『WALL・E』

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 2008年のピクサー映画『ウォーリー』。29世紀の地球を舞台に、荒廃した地球にたったひとり(というか一体)生き残った量産型ゴミ処理ロボット、ウォーリーの物語です。主人公がロボットのため全編にわたってセリフがほとんどないのに、まったくもって退屈しないすごい映画。主人公ウォーリーと、地球にあるミッションのためにやってきたイヴが徐々に通わせていく友情(恋かもしれない)は、あまりにもピュアで心が洗われるようです。ほとんど唯一ともいえるセリフ「うぉ〜〜〜り〜〜〜」「イ......ヴァ」を聞くと、無条件に頬が歪みます(微笑み慣れてないので)。ですから勇気を出して飲みに誘った人に断られたあとなどに観ますと、特に心が温まるというわけです。猟奇的な彼女テイストなイヴの破壊者ぶりにも、けっこう萌えます。
 ですが、人類の描かれ方はいろんなことを考えさせてくれます。荒れ果てた地球から脱出し、優雅な宇宙船暮らしをして700年。生活のお世話はすべてロボットがやってくれるという夢のような世界で過ごす、29世紀の人類。コンピューター制御された一人乗りの空飛ぶバギーのようなものでどこでも行けるので、歩く必要はなし。皆揃って足が退化して短くなり、肥満化しています。服はややダサなレオタードのようなものを男性も女性も身にまとい、すべてにおいて個性ゼロ。みんな呑気で悪い奴もいなそうです。この世の中、いいのか!?
 働く必要もなく、動く必要もなく、誰もが平等に欲しいものをすべて提供されるようになったら、ほんとにこの映画の人類のように個性なぞ消えてしまうのかもしれません。進行する格差社会に忸怩たる思いを抱いている筆者も、この様子を見ると格差社会もアリかもしれないと考えが改まります(簡単すぎです)。とにかく、今の世の中がちょっとだけ幸せに思える、いい映画。特典映像としてついているショートストーリーも素晴らしいので、お見逃しなくどうぞ。

(文/鬱川クリスティーン)

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