もやもやレビュー

『サマーウォーズ』が人見知り克服に一役。と、専門家は誰も言っていない。

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 長野県上田市の田園地帯を舞台に、大家族の活躍を通して人と人との繋がりを描いた名作『サマーウォーズ』。ある夏の日、学校のマドンナであるナツキ先輩に主人公・ケンジが突然頼まれたバイトの内容は、一緒にナツキの実家に帰ること。一家のドンであるおばあちゃんの90歳の誕生日を祝うために総勢26人の親族が集まる陣内家で、ナツキの婚約者のフリをするというものでした。

 有名な花札戦は非常に興奮しますし、家族の熱い絆に感動ひとしおですが、ひとつ腑に落ちないことがあります。ケンジはコミュニケーションが上手すぎる!ということです。実際、ケンジが置かれたシチュエーション、人見知りにとっては地獄といっていいです。

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<第一の地獄>
あまり話したこともない(たぶん)、美人の先輩と2人きりで新幹線で過ごす約1時間半の地獄体験(東京から上田まで新幹線あさまで行くと想定)
→前日の夜、やっぱり現地集合にして欲しいと電話をするかどうかで1時間は余裕で悩みます。また、席の配置に関してはガチで隣同士でないだけマシですが(作中では通路を挟んだ隣という配置)、早々に話のネタが尽きて沈黙は必至です。寝たフリ等、持てる技術を駆使してやり過ごすしかありません。それも、なぜ現地集合でお願いしますと言わなかったのかを悔やみながら。

<第二の地獄>
たいして知らない先輩の実家で、初対面の人に囲まれて過ごすという生き地獄
→着いた先、つまりナツキの実家には、知らないおじさんやおばさんや子どもがいっぱいです。特に子どもは、扱い慣れていない人にとってはかなりの危険物です。

<第三の地獄>
大勢の前で自己紹介をさせられる地獄
→これは人見知りでなくても辛い方は多いと思います。頭真っ白と目の泳ぎはデフォルトです。さらに今回のケースでは、付き合ってもいない相手の婚約者のフリをするという高度な技を要求されています。嘘と自己紹介の両立はかなり厳しいのもがあります。

 これら地獄シチュエーションの数々を、軽やかに乗りこなすケンジから学ぶこと多し。人見知りは、ケンジにコミュニケーション術を学べ!ということです。
 
(文/根本美保子)

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