貧乏にめげそうになったら『死霊のはらわた』を観よう。
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もう30年も前の作品ですが、いまだにずーっと人気が(たぶん)あるサム・ライミの長編デビュー作『死霊のはらわた』。ジョージ・A・ロメロのゾンビものとは一線を画すゾンビもので、不死の悪霊が人間に取り憑くことで人間がゾンビ化するというもの。正確にはゾンビじゃないと思うのだけど、それはまた別の話で。
さて、超低予算(約35万ドルといわれています)で作られているこの映画、撮影場所は森の中の古い山荘、たった1箇所のみ。あとは森の中です。だからもちろんチープさも全開!なんですけど、疾走する悪霊(姿は見えない)、襲いかかってくる植物のツル(そこら辺に落ちてるものだからお金がかからない)、血の量だけは多い(ここはやっぱり派手にしとかないと!)など、低予算ならではのアイデアと工夫でしっかり怖い。お金がないという制約が、逆に面白さに磨きをかけている。それこそが『死霊のはらわた』の素敵さであり、何かと予算のない昨今、これを観るとすごくやる気が出るし勇気づけられます。
それでもって大成功した『死霊のはらわた』、勢いに乗って2と3が作られてますが、どんどん予算がアップしてることも目に見えてわかります。
2は1で生き残った主人公(ブルース・キャンベル)が、まさかの同じ場所で同じ悪霊と戦う話。DVDのチャプターリストだけを見ると、「あれ?もしかして1見ちゃってる?」と錯覚してしまうほど同じです。が、本編を観てみると、食器などの小道具が増えていたりして予算増えてる感が感じられます。
また、ライミの低予算乗りこなしスキルも格段にアップ&ほぼコメディ路線にシフトしています。自分の手と戦う主人公の一人芝居はチープな茶番感が最高ですし、血の量も完全にあり得ないレベルの量に。さらに1ではただのケツ顎の若者だった主人公が、悪霊と戦うプロにキャラ替えされ、右手にチェーンソーを装着して生きる兵器のような感じに! なにこのかっこよさ! そうして最終的には予想外の超展開が起こります。
続く3は、2のラストで起こった超展開を受け、もはや全然ホラーじゃなく、完全悪ノリ映画に仕上がっています。でも馬が登場したり、キャストの数も信じられないほど増えていて、予算が激増している様子がうかがえて、なんだかこちらまで喜ばしい気持ちになってきます。
余談ですが、2と3の冒頭で必ず主人公が恋人のリンダ(1にも恋人として登場したキャラクター)と山荘に行って悪霊と戦って......という説明シーンがあるんですが、1・2・3すべてのリンダが違う人。故意なのか、仕方がなかったのかはわかりませんが、こういう乱暴な感じもけっこう好きです。
という具合に、1〜3まで通して観ると、超低予算から工夫とアイデアの力でのぼり詰めたサム・ライミの才能に興奮します。『スパイダーマン』ももう一度観たくなりますし。私たちも、予算がない、貧乏だからと諦める必要はないみたいです。工夫次第でその先はいかようにも開けるのだと、『死霊のはらわた』は教えてくれます。
(文/根本美保子)