視聴制限引き下げでマンネリ化を招いたWWEの苦悩と重なる哀しみの問題作『ロボコップ3』
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「80年代ヒット作の黒歴史的続編特集」でも採り上げた『ロボコップ3』(1993)。当然、戦犯は監督といいたいところですが、所詮は製作スタジオに雇われた身分。本作監督フレッド・デッカー氏は、加害者である以上に最大の被害者なのである!
そもそもの禍因は製作スタジオ「オライオン・ピクチャーズ」の財政危機。第2作(以後『2』)公開翌年の91年11月に破産申請(再建可能なチャプター11)するまでに悪化しています。そんな中、グロさが売りのシリーズながらキッズ層の人気の高まりを感じていたスタジオ側は、本作『3』の視聴制限を「PG13(12歳以下・保護者の要注意)」に下げ、市場拡大を狙ったワケです。
そこでスタジオ側が白羽の矢を立てたのがデッカー監督。映画オタクとして注目された氏は、青春ホラー『クリープス』(1986)で初監督。次作のホラーコメディ『ドラキュリアン』(1987)は、今現在も高いカルト人気を集めるほど。
特に後者では、ドラキュラや狼男などの怪奇モンスターを親しみやすく描写。オカルト版『グーニーズ』ともいうべき佳作に仕上げたその手腕が『ロボコップ』のダーティなイメージを変えるものとして期待されたのでしょう。事実『ドラキュリアン』で描かれたフランケンシュタインと幼女のハートウォーミングな絆は、『3』のロボコップとハッカー少女の関係性でも見て取れます。
プロレスにおいてもアンダーテイカーやブギーマンなど、怪奇派ヒールレスラーが結果的に子供の人気者になるケースはしばしばあり、いかつい存在が身近に感じられる時の求心力は確かに強力です。
そして『2』に引き続き採用されたフランク・ミラーの脚本を"子供向け"の至上命令を受けたデッカー監督が変更しまくり(『2』と『3』の没脚本はコミックで発表されています)、ミラー要素は日本企業進出やアンドロイド忍者「オオトモ」くらいしか残らず、"グロ無し安全!空飛ぶロボコップ!"な単純明快ヒーローモノに仕上がったのでした(でも、話の運びが粗い『2』に比べると構成・演出は『3』の方が上かも)。
しかし、スタジオ破産による公開延期に見舞われ、さらに前2作のイメージは崩し難く、酷評の乱れ打ちで興収は前作の約1/4。「私のキャリアは"これ"で死んだ」という嘆きの通り、デッカー氏は完全に終わった存在に(前述の監督作も赤字だし......)。
90年代にお下劣過激路線で大ブームを築いたWWEも、保護者団体からのクレーム回避と低迷期脱却のために視聴制限を「PG(全年齢・保護者の要監督)」に下げています。こちらは狙い通り視聴層拡大に伴い売上を回復させましたが、元来、流血がつきもののプロレスにおいて表現の幅が狭まった結果、マンネリ化を招いたのも確か。
とはいえ、WWEがPG路線で出来ることを模索し続けているように、『ロボコップ』でもTVドラマ化やアニメ化で『3』路線が継承(アニメでも飛んでます!)されており、デッカー監督の尊い犠牲は無駄にはならず!(※)
ちなみに監督がファンだったジャッキー・チェンの武術アクションチームを招聘したかったものの予算の都合で叶わかったそうな。実現していたら評価が変わったかも?
(文/シングウヤスアキ)
※ 『ドラキュリアン』の共同脚本を務めた盟友のシェーン・ブラック(『アイアンマン3』監督)が監督を務めるリブート版『プレデター』の共同脚本に抜擢。約13年振りの現場復帰が決まっています。