【80年代特集!】 テイカーの"不良オヤジ"時代にも似た、これはこれで悪くない綺麗な黒歴史『ジェイソンX 13日の金曜日』
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80年代のスプラッターブームの火付け役となった『13日の金曜日』。続編『Part 2』でお馴染みの殺人鬼「ジェイソン・ボーヒーズ」がデビューすると、以降、8作目まで1~3年のスパンで続編を量産。ジェイソン先生は死んでは蘇り、殺人鬼というよりゾンビ系モンスターに成長。
でも、それだけ短いスパンで作り続ければ飽きられるのは自明の理。パラマウントからニュー・ライン・シネマに権利が移りますが、すでに落ち目とあって、イメージを一新しなければ!という製作陣の思いだけが先走った結果、見事に黒歴史な9作目(1993)と10作目(2001)が爆誕しました。
どちらも甲乙つけ難い超絶珍作なんですが、今回のお題は10作目『ジェイソンX 13日の金曜日』。
軍が捕獲したジェイソンを研究所に移送する筈が案の定失敗し、女性科学者の機転で冷凍処理。しかし誰もそれを知ることなく数百年が経過した2455年。学生探査船が環境汚染の末に捨てられた地球を探索中、冷凍されたジェイソンと女性科学者を発見! よせば良いのにそれを回収&解凍しちゃって、探査船内は地獄絵図というのが本作のあらすじ。
9作目公開後『フレディVSジェイソン』の製作に難航し7年が経過。そろそろ何か作らなきゃ......そうだ10作目記念だ! 宇宙だ! といったやりとりがあったのか定かではありませんが、10作目という大義名分を得た本作は、過去数作よりも予算が(微妙に)増加。CGIもふんだんに盛り込んだデジタル・スプラッターとなったのでした。
宇宙を舞台にジェイソンが(なんとかハザードのM・ジョボビッチ的)女アンドロイドとバトルして、挙句メカになっても「これはアリかな」と思えてくるのは、ジェイソンが小型寄生生物になるという設定で大ひんしゅくを買った9作目のおかげかも。少なくとも殺人鬼たるジェイソンらしさを(どうにか)保った上で不死身の存在に戻ったという意味でも「まだ許せるレベル」です。
まあ「要は『エイリアン』もどきだろ」といったらそれまでなんだけども!
WWEでも、生き埋めにされては蘇るジェイソン先生張りの怪奇派レスラー「ジ・アンダーテイカー」が人気ですが、怪奇派を10年間通したあと、突如"アメリカン・バッド・アス"なる不良バイカーオヤジギミックに転向したことがあります。
従来のファンからは不満は出たものの、得体の知れない巨人というテイカーの本質的なイメージを大きく損なわなかったこともあり、新しい世代のファンを中心に好意的に受け入れられました。
とはいえ、テイカーの本流はやはり怪奇派であることは変わらず、2004年以後はギミックを戻しています。
本作のメカ・ジェイソンも『13金』を知らない新しい世代に受けたそうですが、ニュー・ライン・シネマにとっての本命企画だった『フレディVSジェイソン』で従来のイメージに戻り、2009年にリブートされ、恐怖の殺人鬼への完全回帰を果たしています。
9作目が完全なる黒歴史なら、10作目は"綺麗な黒歴史"。2015年に再リブートされる『13金』の前に味わい深い黒歴史を堪能しては如何でしょうか?(あくまで珍作だから自己責任で!)
(文/シングウヤスアキ)