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プロレス×映画

残念主人公のせいでヒール側に肩入れしたくなる珍作『メガフォース』

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 プロレスも長く観ているとベビーフェイス側ではなく、敵側のヒールを応援したくなる時があります。特にWWEなどではベビーフェイス人材に対するゴリ押しプッシュが鼻についたり、対象の選手本人の実力やギミックとのイメージが見合っていないように感じる場合です。

 そこで今回は『キャノンボール』シリーズでお馴染み、香港「ゴールデン・ハーベスト」のレイモンド・チョウ製作、カーアクションの雄ハル・ニーダム監督による『メガフォース』(1982)がお題。超ド級珍作にして、主役がどうにも残念な作品ですが、まずはあらすじから。

 テロ組織の戦車部隊掃討のため、アフリカの小国に潜入したエース・ハンター率いる秘密機動部隊「メガフォース」。急襲作戦は成功し撤収するも、紛争を恐れる隣国がメガフォースの入国を拒んだことで、退路を断たれ立ち往生。果たしてハンターたちは無事脱出出来るのか!?

 ......この筋書き自体は後年の『デルタ・フォース』に類似点が多いんですが、そんなことより主人公「エース・ハンター」です。

 ツルテカもっこりスーツ(まあこれは隊員全員ですけど)にねじりハチマキという半ばダンサーのような格好に、ヒゲ面&ボリューム満点のブローヘアという刺激的アンバランス感。さらにキザなダンディ属性付きで、ツンデレ系ヒロインとイチャつくシーンが無駄に多いなど、なにかと腹立たしいことこの上なし。
 
 この主人公のキャラクタは、ニーダム監督との仕事が多いバート・レイノルズ御大のイメージ(ちょっと抜けてるキザなタフガイ)を引きずっている節があり、神経質な優男系のバリー・ボストウィックはミスキャスト感が否めません。プロレスラーならヘタレヒールとしてはアリだけど、ベビーフェイスとしては無い、というタイプでしょうか。

 バリーさん本人は米演劇界の最高権威トニー賞のミュージカル主演男優賞などを獲った実力派なんですが、タフガイ感はおろかアイシャドーのせいでオネエ風味すら漂う始末。劇中で飛行機酔いを催すほか、クライマックスでも自分のバイクだけ転倒して大ピンチって弱々しいにも程があるでしょ!(一応オチには繋がるけども)

 秘密部隊隊長なのにこの弱々しさ。なんだかWWEの「シン・カラ」を思い出します。
 シン・カラは天才ルチャドールと称され鳴り物入りで入団。大プッシュでデビューするも怪我を連発した挙句、指を痛めただけで脚本を無視して試合を中止させてしまうという軟弱さを露呈し、気付いたら退団という末路を辿っています(※)。

 とまあ主役が残念な本作ですが、一方で敵側のテロ組織のボスが良いキャラなんです。
 主人公ハンターの元親友で、負けずキライなセコイ性格。甲高い声で訛った英語を話すという、プロレスでいえば故エディ・ゲレロや故クラッシュ・ホーリーといった何故か憎めないキャラとなっており、途中からそちらに肩入れして感情移入しまったほどでした。

 主役以外でもバイクや車両も残念感に溢れており(それでもニーダム監督らしい壮観なシーンはちょいちょいアリ)、ラストの脱出シーンは80年代映画でもまれに観るショボさかつ無駄に長いという、珍作好きなら一度は観ておくべきマストなシーンですよ!

(文/シングウヤスアキ)

※ 2014年11月現在、2代目がWWE/NXTで活躍中。初代の人はメキシコに帰国しています。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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