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プロレス×映画

プロレス界の格闘家ギミックの胡散臭さに匹敵するカルト珍カンフー映画『片腕ドラゴン』

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 カンフー映画といえば、ブルース・リーのような実際の武術経験を活かした正統派系、またはジャッキー・チェンの独創的カンフーと派手なスタントのエンタメ系が浮かびます。が、いずれにせよ低予算でも成立する、ある種の様式美が精神性として残るジャンルかと思います。
 それ故にカンフー映画が"アジアのエクスプロイテーション(ウケそうな・金になりそうな要素を強調した)映画"の一面を持っているのもまた事実。

 製作者の正気を疑うような怪作が跋扈するトンデモカンフー映画界隈で、今も語り継がれるスタンダードが『片腕ドラゴン』(1972)シリーズ。60年代に香港で大ヒットした武侠モノ『片腕必殺剣』(1967)シリーズのカンフー版であり、主演も同作でスターとなったジミー・ウォング大先生が連投。

 主人公の拳士ティエンロンの所属する道場は、各国から格闘家を用心棒にしたライバル流派の道場破りにより壊滅。唯一生き残ったティエンロン自身も右腕を切断されるが、仲間や師匠の仇を討つべく、秘薬と修行により左腕を鋼鉄のごとき殺人拳に強化。今"片腕拳士"の復讐が始まる!

 というあらすじですが、問題は中身。武術経験のないジミー大先生を筆頭に、8割方のキャストの格闘アクションは観る者の腹筋を大いに刺激するソルティタイプ。監督も務めたジミー大先生の採った手段は、それをごまか......もといカバーするため、『片腕必殺剣』シリーズを成功させた勢いのみで思いついたかのようなアイデアで乗り切ったのであります。

 しかし、謎すぎて笑いを誘う片腕演出(後年のキョンシー風演出あり!)以上に、各国の格闘家たちがもうヤケクソ。蹴り脚がまったく伸びてない素人然としたムエタイ兄弟、インド人設定の顔だけ黒塗りのヨガの達人、気功でマッチョになる(風船で膨らませてる感全開)ラマ僧、本作最強の刺客だけど強烈なモブ顔の沖縄空手家とよりどりみどり! まともなのは柔道家だけ!

 この辺りは、適当なプロフィールが通用するプロレス界の格闘家ギミックの胡散臭さと相通じるところ。特に思い出されるのがジャイアント馬場の、生涯唯一の異種格闘技戦の相手となったラジャ・ライオン。"パキスタン空手王者"として注目されましたが、道場でちょっと上段蹴りを練習した程度にしかみえない選手だったため、色んな意味で80年代プロレス界の伝説となっております(そもそも逆水平チョップを打つ空手家とかまさに『片腕ドラゴン』風インチキ空手家)。

 要するに本作は、ギミック先行のしょっぱいレスラーしか出てこない興行のようなものなんですが、ジミー大先生の真面目にバカをやり切る姿勢に圧倒されて、次はどんな強引演出で来るのかと楽しみになってくるのだから不思議なもの。
 打撃の攻防ではかすった程度なのに「パカーン!」と効果音が鳴ったり、クライマックスでのジミー大先生とヨガの達人の逆立ち(スーパーコマ撮り)バトルは一度観たら忘れられないハズ。
 
 実は本作よりも続編『片腕カンフー 対 空とぶギロチン』(1975)の方が『キル・ビル』でのオマージュのネタ元としても有名ですが、まずは本作から観ておくと耐性がつくと同時に感動すら覚える、かもしれません!

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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