連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第85回 『プラン9・フロム・アウタースペース』

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『プラン9・フロム・アウタースペース』
1959年・アメリカ・79分
監督・脚本/エド・ウッド
出演/グレゴリー・ウォルコット、ベラ・ルゴシ、ヴァンパイラほか
原題『Plan 9 from Outer Space』


 前回、最低映画の代表作『死霊の盆踊り』(65年、脚本エド・ウッド)を紹介したが、1980年にアメリカの『ゴールデン・ターキー・アワード』(黄金の下手クソ大賞)誌の読者投稿で最低作品大賞と最低監督大賞の二冠に輝いたエド・ウッド監督作品『プラン9・フロム・アウタースペース』にも触れておかなければなるまい。

 当初作品は『Grave Robbers from Outer Space 』(外宇宙からの墓荒らし)というタイトルで台本が書かれた。なりふり構わないエド・ウッドは、バプテスト教会の幹部だった自宅の大家に「あのベラ・ルゴシ最後の映画!」「あのヴァンパイラが出演!」とホラー系のビッグネームを並べ、キャスト全員を信者にするまでして出資させた。「墓荒らし」はスポンサーが教会なので、現在のタイトルに変更された(元の方がいいな)。

 だが作品のあまりの酷さに全米の配給会社が無視。ようやく大家は「エドにだまされた」と気付いた(笑)。作品の権利はテレビ局に安く買い叩かれ、深夜テレビなどで何度も放送された。いったい、どれだけ酷かったのか、ストーリーを追ってみよう。


 まず、蝶ネクタイで正装したインチキ臭いオジサンが登場し「あなたの身にも、いつかこうした事件が起こるかもしれません」などと語り出す。見覚えあると思ったら、『死霊の盆踊り』に同じ語り役で出ていたクリズウェル(本職・エセ予言者)だ。

 ハリウッド市街の上空で旅客機が空飛ぶ円盤に遭遇する。円盤がフラフラ揺れながら(糸で吊っている)墓地に着陸すると、やがて埋葬されたばかりの女性が生き返り、自分を埋めた墓掘り人を殺す。その頃、女性の30歳年上の夫(元祖ドラキュラ俳優のベラ・ルゴシ)が妻の後追い自殺する。

 夫人を演じたのは、ウエスト39センチの怪奇タレント・ヴァンパイラ。赤狩りのブラックリストに載せられ、食う物に困っていたところをエド・ウッドがオファー。「台詞なしのゾンビなら」と、組合最低賃金の1日200ドルで合意。衣装は股のところに穴が開いていたが「ふん、どうせこんな映画誰も見やしないわ」と気にしなかった豪気の女だ。

 円盤に遭遇した機長が、墓地裏に建つ自宅のテラスで妻とティータイム。「今日、葉巻型の空飛ぶ円盤を見たよ」(いやアダムスキー型ですよ、機長)。機長役は、その後それなりに売れた中堅俳優のグレゴリー・ウォルコット。長い間『プラン9』への出演を後悔していたが、ティム・バートンの『エド・ウッド』(94年)にカメオ出演しているのでチェック!

 その時、上空を円盤が通過。強烈な閃光と突風でドリフのコントみたいに椅子から大袈裟に転げ落ちる夫妻。同時刻、墓地でも墓掘り人殺害事件を捜査中の警察官達が「わあ~っ」と転んでいる(笑)。円盤が着陸した方へスキンヘッドの巨漢刑事クレイ(元プロレスラーのトー・ジョンソン)が向かうと、黒マント姿の老人(ほとんどドラキュラ)とその妻が現れ挟み撃ちに。銃声を聞いて警官隊が駆け付けるとクレイ刑事は死んでいる。

 翌日、ハリウッド上空に飛来した3機の円盤を米軍が攻撃! 演習か何かを使用した本物映像と、砲撃を受けるたびにフラフラ揺れる小学生の工作みたいな円盤が交互に映し出され、両シーンの激しいギャップに頭を抱える。米軍の猛攻撃に円盤は退散し、宇宙空間に浮かぶ母船に帰艦する。船内には異星の皇帝がいて、宇宙兵士エロス(エロスって)がプラン9(第9計画)と呼ばれる死者復活計画を提言する。老人夫妻を甦らせたのはテストだったようだ。でも何のために地球人の死体をゾンビに?

 その夜、フライトで留守の機長宅に老人ゾンビが侵入。墓地へ逃げる奥さんを追う老人ゾンビ(昼になっている)。行く手には妻のゾンビ(夜になっている)。さらに墓石の下からクレイ刑事が這い出てくる。それにしても、ベラ・ルゴシの老人ゾンビは他の俳優と同一画面で絡まない。一緒に映っていても終始後ろ向きで顔を見せない。これには理由があった。実はベラ・ルゴシは作品の3年前に亡くなっていて、これまでの登場シーンは全てエド・ウッドが「いつか使える」と撮り溜めていた未使用フィルムからの流用。マントで顔の半分下を隠しているシーンは、エド・ウッドの整骨医にやらせた代役だった。同じシーンで昼と夜がゴッチャになっていたのも、そのせいだ。

 その頃母艦では、なぜかクレイ刑事のゾンビがエロスに襲いかかる。女性隊員タンナが電源を切ろうとするが(ゾンビは電気で動く)、電源を兼ねる電子銃が故障している。ここで皇帝が「床に投げれば電流が切れる」とアドバイス。タンナが銃を床に放ると、エロスの首を絞めていたクレイの手が止まる。エロス「近すぎた」。皇帝「そうだな」(何が近すぎたのか?)。エロス「銃を修理しろ」。タンナ「落としたら治ったわ」。......エド・ウッドは決して人を笑わせようと脚本を書いているわけではない。単に下手なのだ。

 ここで皇帝は「死者で地球人を驚かせ、地球上の大都市を行進させるのだ」と理解不能な指令を出し、無責任にもエロスとタンナに丸投げして去ってしまう。やがて機長達は墓地で円盤を発見。エロスは地球人の原水爆開発をダラダラと警告するが、イラついた機長に殴られ失神。見苦しいドタバタ乱闘劇の挙句、宇宙へ逃げ帰る円盤が火だるまになりながらハリウッドの上空で爆発して完。


 全編に渡る不可解な演出と繋がらない台詞。これは筆者の筆力では十分に伝わらないので、ビールでも飲みながらディスク鑑賞して欲しい。だが今や『プラン9』はインターネット・ムービー・データベースのワースト100作品のリストにも入っていない。『プラン9』より酷い映画が少なくても100本はあるとは......。インターネットの発展で情報量が激増した現代、「最低映画」のハードルはより高く(低く?)なってきているようだ。

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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