連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第82回 『三大怪獣 地球最大の決戦』

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東宝
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『三大怪獣 地球最大の決戦』
1964年・東宝・93分
監督/本多猪四郎
特技監督/円谷英二
脚本/関沢新一
出演/夏木陽介、若林映子、星由里子、ザ・ピーナッツ、志村喬ほか


 今年5月31日に世界同時公開された『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で、ゴジラのライバルであるラドン・モスラ・キングギドラが復活した。数ある人気怪獣がいる中でのこのセレクトは、同怪獣達が共演した『三大怪獣 地球最大の決戦』を意識しての事であろう。そこで今回はハリウッド版ゴジラの公開に絡め、キングギドラがデビューした同作品について語りたい。

 作品はゴジラ・シリーズ第5作目に当たり、最大のウリは「ゴジラ1匹では敵わない」と企画された、ゴジラが初めて戦う宇宙怪獣キングギドラ。全身が黄金に輝き、3つの首と二股に分かれた尾、冷酷非情な双眸。鳴き声は「テケテケテッ」と宇宙っぽい電子音。身長はゴジラの倍の100メートル。得意技は3つの口から雷撃のように放射する引力光線。撃たれた物は重力を失い、宙に舞って四散するという画期的な武器だ。内容はツッコミ所満載の、老若男女が楽しめる娯楽作品に仕上がった。


 進藤刑事(夏木陽介)は、お忍びで来日するセルジナ公国のサルノ王女(『007は2度死ぬ』のボンドガール、若林映子)の護衛を任命される。だが王女を乗せた専用機にはセルジナ左翼が時限爆弾を仕掛けていた。爆発の直前、王女は「ここから逃げなさい」と脳内に響く声に導かれ非常口から脱出する。

 翌日、作業着で男装した王女が広場に現れ、野次馬から嘲笑されながら「アタクシは金星人です。まず九州阿蘇に異変が起こります」と予言する。海に落ちた王女は漁船に救助され、王家の腕輪と猟師の服を交換していた。王女は阿蘇山に行き「ラドンが復活するのです」と観光客に下山を促すと、火口からラドンが出現する。

 次に王女は、テレビ番組に出演していた双子の妖精(ザ・ピーナッツ)がモスラのいる島へ帰ろうとしていた横浜港に現れ「この船は出航してはいけません」。進藤刑事の妹で、妖精の取材に来ていたラジオ・レポーターの直子(星由里子)は王女をホテルに滞在させる。妖精は王女の予言を信じ、乗船を見合わせる。その頃、洋上にクジラの群れを追うゴジラが出現し(ゴジラはクジラを食うという新事実発覚)、妖精が乗るはずだった船を放射能熱戦で爆沈させる。ゴジラは横浜港に上陸し、空から「キーン」とラドンも飛来。2匹は牽制し合いながら富士山方面へ進撃する。

 ホテルで左翼の暗殺団を撃退した進藤は、金星人と名乗る王女を富士山麓にある精神科の権威・塚本博士(黒澤映画でお馴染みの志村喬)に診察してもらう。そこで王女は、高度な文明で栄えた金星が5000年前にキングギドラに滅ぼされたと話す。金星人の魂が王女に憑依し、キングギドラの地球襲来で覚醒したのだ。

 博士「そのキングギドラが地球に来るというのかね」。王女「もう来ています」。その頃、黒部渓谷に落下していた巨大隕石の中から炎が宙に噴き上がり、黄金に輝く竜の姿に変わる。あらゆる怪獣映画の中で屈指の名場面、キングギドラ登場だ! 長野県松本市を通過したキングギドラは東京・横浜に飛来し、引力光線と巨大な翼による衝撃波で都市部をメチャメチャにする。

 1匹でも退治するのに大変な怪獣が同時に3匹も現れ、勝ち目のない防衛軍は「核を使ってもよいのなら」と言い訳して戦おうとしない(おいおい)。そこで妖精が驚きの提案をする。2年前(『モスラ対ゴジラ』)、卵から孵ったばかりの双子の幼虫モスラは見事なコンビネーションでゴジラを日本から追い出している。その時のダメージか後に相方は死んだが、1匹残っているモスラにゴジラとラドンを説得させて共闘するというのだ。藁にもすがりたい政府は、妖精の案を採用する。

 妖精にテレパシーで呼び出されたモスラが富士裾野に遠路はるばる到着し、大喧嘩しているゴジラとラドンの仲裁を「キイ、キイ」と始める。カッカして話を聞かない両者に、モスラはかつてゴジラを戦意喪失させたネバネバ糸を「シャーッ」と頭から吐き掛ける。これで喧嘩が中断し「キイ、キイ」と本題に入るモスラ。まだ2歳のモスラに説得されるオバカな大人のゴジラとラドン。これを進藤兄妹らが遠巻きに見物している。

直子「ねえ、いま何て言ってるのかしら」
進藤「おおい、無理言うなよ。モンスター語なんて習ったことないよ」
妖精「『争いをやめて、みんなで力を合わせて地球をキングギドラの暴力から守ろう』と言っています」
直子「ゴジラもラドンも賛成したの?」
妖精「いいえ。ゴジラもラドンも『俺たちの知ったことか。勝手にしやがれ!』と言っています」
進藤「ひでえなあ、チキショ~」
妖精「ゴジラは『我々が人間を助ける理由は何もない。人間はいつも我々を虐めているではないか』と言っています」

いちいち口を揃えて通訳する妖精の「と言っています」が笑える。そこへ、ついにキングギドラが襲来! 仕方なくモスラは1匹でキングギドラに立ち向かい、引力光線で何度も吹っ飛ばされ全く歯が立たない。これを傍観していたゴジラが「ギャアアア~ン」と吠え、ようやく本来の敵に気付く。しかしゴジラもラドンも、キングギドラの強大なパワーの前に劣勢! 果たして三大怪獣に勝機は訪れるのか?

 ラスト、金星人の魂が去った王女と被弾しながら命懸けでお守りした刑事の別れが、衆人環視の空港ロビーで行われる。一国の王女と日本のヒラ刑事......2人の間に交錯する叶わぬ恋。怪獣映画なのに、『ローマの休日』にインスパイアされた切ないシーンで幕を閉じる。


 これまで悪役だったゴジラは、この作品を転機に「人間の味方」として人類を脅かす怪獣や侵略者と戦うようになる。次作『怪獣大戦争』(コラム第42回https://bookstand.webdoku.jp/cinema/amano/201602/01115242.html)を経て、1966年に子供達を熱狂させた「怪獣ブーム」の主力となり、変身ヒーロー達と共に昭和の地球平和を守り抜くのであった。

(文/天野ミチヒロ)

<おまけ その1>

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高さ約40センチ、翼長約60センチのキングギドラ大型フィギュア(ユニファイブ)。筆者私物。

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実はキングギドラの体色は、金色に塗られる前は青く、翼にはこんなグラデーションが! ユニファイブのノーマル色フィギュア(写真上)と同サイズのNGバージョン(少年リックasエクスプラス)。筆者私物。

<おまけ その2>

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当時のパンフレット。筆者私物。

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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