連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第73回『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』公開50周年企画 <幻のゾンビ映画特集 PART-2>『インディアン・ゾンビ 死霊の詰合せ』

『インディアン・ゾンビ 死霊の詰合せ』VHS版 ジャケット

●ゾンビ映画の誕生
ゾンビとは元々、アフリカから中米ハイチに伝播したブードゥー呪術によって蘇らされ、農作業などに使役する罪人の死体を指す。そういった意味での世界初のゾンビ映画は『ホワイト・ゾンビ』(32年)だが、「人肉を食う。噛まれた者もゾンビになる。頭を破壊すれば停止する」といったお約束は、ジョージ・A・ロメロの3部作によって定義付けられた。
ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』(68年)、『ゾンビ』(78年)、『死霊のえじき』(85年)は、現在に至るまで無数に製作されてきたゾンビ映画の原典にして頂点を極め、それらはブードゥーのクラシカルなゾンビとは区別され「モダン・ゾンビ」と呼ばれている。
今年10月1日、モダン・ゾンビの先駆的な作品『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』が公開50周年を迎える。

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『インディアン・ゾンビ 死霊の詰合せ』
1985年・アメリカ・81分
監督・脚本/フィル・スムート
出演/ラッシュ・ラルー、アンナ・レイン・テータム、シンシア・ベイリーほか
原題『THE DARK POWER』

 現在のメディアで「ネイティブ・アメリカン(アメリカ先住民)」と表記される「インディアン」は、放送禁止用語のように思われている節があるが、1960年に米国内務省インディアン管理局が使用を開始した「ネイティブ・アメリカン」を白人の押し付けと感じ、誇りを持って「アメリカン・インディアン」を自称する部族継承者は多い。「国立アメリカ・インディアン博物館」、大リーグ球団「クリーブランド・インディアンス」、人権団体「アメリカン・インディアン運動」などと、一概に「インディアンという言葉を使ってはダメ」とはなっていないのだ。

 さて、本作のインディアンは、多くの人がイメージする北米のそれではない。14~15世紀にメキシコ高原で栄えたアステカ文明以前に実在したトルテカ文明(7~12世紀)のトルテック族だ。

 合衆国南東部の郊外。日頃から「地球が危ない」とご近所に触れ回り、悪霊退散の儀式を行っていたインディアンの古老コーティが、自宅のベッドで「トルテック!」と謎の言葉を残して息を引き取る。その右手には、鷲の足がドクロを掴んだ形状をした古式ゆかしい祭具が握りしめられていた。

 そんな町の変わり者コーティだが、インディアンの末裔だけに郷土史的な存在価値は大きかった。そこで地元ローカルテレビ局はコーティの追悼番組を制作するため、レポーターのメリーが彼と仲良しだったジェラードじいさんにインタビューをする。白髪のジェラードは、先日も野生のピューマを生け捕りにした現役バリバリの森林警備隊員だ。

 ジェラードはコーティから聞いていた話を説明する。トルテカ文明が滅びた時、追放された残党がこの辺に住み付いた。その中に「闇の力」に仕える4人の祈祷師がいて、彼らはコーティの庭先に生きたまま埋葬されたのだという。死霊というか「生き霊の詰合せ」だ。コーティが死んでも離さなかった祭具は「闇の力」に対抗する「陽の力」を持ち、コーティから貰ったジェラードの鞭は、悪魔から身を守る物で鞭先が覆われているのだという。

 次にメリーは、郷土資料館で恐るべき話を聞く。コーティは連邦政府に「もし土地を掘り起こして4体の死体が出てきたら、海軍に引き渡して海に沈めて欲しい」と請願していた。4人の祈祷師は魔力を維持するため生き物を食って現在まで生き長らえているのだという。そういえば以前から近辺で数人の行方不明者が出ている。そして伝承によれば、まもなく4人の祈祷師が完全復活する「悪魔の訪れる日」がやってくる。

 コーティの家が空き家になったことをメリーから聞いた友人の女子大生リンは、同じ大学に通う親友ベスに、数人でシェアすることを持ち掛ける。コーティの孫デビッドも「魔法は終わった」と現代っ子らしく快諾し、ベス、リンの他にセクシー担当のスーザン、黒人のタミーという4人の女子大生が共同生活を始める。だが言い出しっぺのリンはガチガチのレイシスト(人種差別者)で、タミーを呼んだベスと初日から口論。オマケにリンの弟が「俺も住む」と押し掛け、女子大生の入浴を覗き、悪友を呼び寄せ飲酒しながら音楽を大音量で流してバカ騒ぎする。

 やがて「コンコンコン」とノックが聞こえ、3バカ男子大学生が「誰?」とドアを開けると、そこにはオダギリジョーのデビュー作『仮面ライダークウガ』の敵・グロンギ族みたいな民族衣装を着た怪人が! 今日が「悪魔の訪れる日」で、土中からトルテックの祈祷師が這い出てきたのだ。

 それらインディアン・ゾンビは各々、ナイフ・弓矢・トマホーク・怪力を武器に、運悪くトイレの修理に来ていたデブの配管工・3バカ大学生・下着姿のスーザン・タミーを次々と血祭りに上げていく。男子大学生の1人は悲惨な殺され方だ。怪力インディアン・ゾンビは、両手の親指を学生の口の両脇に引っ掛け左右にビリビリ~ッ! 引き裂かれた男の顔(作り物)がガマ親分(『おはよう! こどもショー』のキャラ)みたいで笑える。

 みんな死んで屋内が静かになり、異変を感じるベスとタミー。そこへ「コンコンコン」。なぜかインディアン・ゾンビはそこだけは礼儀正しい。タミーはインディアン・ゾンビに押し倒され手足をバタつかせ、手元にあったテレビのスイッチに触れる。すると偶然メリーの番組がオンエア中で「今夜が『悪魔の訪れる日』です。闇の力を抑えられるのは『鷲のシンボル』だけです」。

 それを見たタミーは、壁に掛かっている例の祭具を掴みインディアン・ゾンビの後頭部にグサリ! ベスを襲っていた他の2体もタミーの祭具で刺され、ドロドロ溶けて骸骨に。残り1体となったインディアン・ゾンビは壁に掛かっていた北米インディアンの鞭を手に、駆け付けたスーパーおじいちゃんジェラードと一騎打ち! だが名人ジェラードの鞭は、インディアン・ゾンビの左目を潰して右手首を引っこ抜き、一方的に連打した挙句、首に巻き付けグイッと引いて頭を落とす(ちょっと可哀想)。

 ジェラードを演じたラッシュ・ラルーは40~50年代の西部劇スターで、1917年生まれということは撮影時68歳! 文字通り老骨に鞭打って頑張った。80年代の低予算ホラーやSF映画では、こうした往年のアクションスターをノスタルジックに活躍させるケースはわりと多い。さぞやオールドファンも喜んで......いや、老後にこんな作品は見ないか。

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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