連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第69回 『ゴジラ対メカゴジラ』

ゴジラ対メカゴジラ 東宝DVD名作セレクション
『ゴジラ対メカゴジラ 東宝DVD名作セレクション』
大門正明,青山一也,田島令子,ベルベラ・リーン,平田昭彦,小泉博,今福正雄,福田純,福田純,山浦弘靖,大門正明
東宝
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 今年4月、『レディ・プレイヤー1』の日本公開に合わせてスティーヴン・スピルバーグが13年ぶりに来日した。作品には著作権や国籍の垣根を越えて様々なキャラクターが登場し、日本からもガンダムやガメラと共にメカゴジラが「出演」している。また5月18日には、3部作で製作されるアニメ版ゴジラの第2部『GODZILLA 決戦機動増殖都市』が公開され、昨年の第1部でチラ見せしたメカゴジラが対ゴジラ兵器として起動する。
 このようにゴジラをロボットにしてみたメカゴジラは、主役でもないのに名キャラクターとして現在も人気が高い。そこで今回のテーマは「そもそもメカゴジラとは?」だ。

 1954年に公開された『ゴジラ』から20年、1974年に東宝が「ゴジラ誕生20周年記念」と銘打った『ゴジラ対メカゴジラ』。前例にキングコングをロボットにしたメカニコングがあるが(第59回『キングコングの逆襲』参照)、メカゴジラが当時の子供達に与えたインパクトは、それを遥かに凌駕した。作品の舞台は沖縄で、時代背景には1972年の沖縄返還、1975年の沖縄国際海洋博覧会があった。


 沖縄国際海洋博覧会の建築現場で「大いなる怪獣がこの世を滅ぼそうとするが、2頭の怪獣が人々を救う」という予言が描かれた壁画が発見される。やがて富士山の火口からゴジラが出現するが、風邪でもひいているのか鳴き声がおかしく、「ガシャン、ガシャン」と歩き方もぎこちない。そこへアンギラスも現れるが、幾度となく共に侵略者と戦ってきた仲間のゴジラをなぜか攻撃する(70年代のゴジラは、地球を守るヒーローとして位置付けられていた)。

 ゴジラはアンギラスを撃退し、湾岸の石油コンビナートを火の海にする。すると、工場建屋の中から天井をブチ破ってゴジラがもう一匹登場! 驚く人間たちの目前で実現する「ゴジラ対ゴジラ」! 後発ゴジラが先発ゴジラに光線を浴びせると、メチャメチャかっこいい音楽が流れ出し、焼失した皮膚の下から全身シルバーに輝くロボットが正体を現す。宇宙金属スペースチタニウムで構成されたメカゴジラだ! ションベンちびるほど痺れる、怪獣映画史屈指の名シーンだ。

 アンギラスはゴジラがニセ者と解って戦ったのだ。メカゴジラは指がミサイルになっているフィンガーミサイルや両目から出るスペースビームでゴジラを苦しめる。双方の光線が空中で激突して大爆発を起こし、その衝撃でゴジラは海までふっ飛ばされ、メカゴジラは故障して基地へ戻っていく。

 メカゴジラは、沖縄最大の鍾乳洞・玉泉洞の奥に秘密基地を構えるブラックホール第3惑星人の侵略兵器だった。メカゴジラの腕にマーキングしたMG(メカゴジラ)という英字ロゴが何気に地球ビイキだ(笑)。修理が済んだメカゴジラは沖縄に出現する。

 この危機に、古代琉球民族の末裔である女性が伝説の神獣キングシーサーを甦らせる『ミヤラビの祈り』を歌い出す。沖縄だけにシーサーの怪獣という直球勝負が心地よいが、歌詞はすべてヤマトグチ(標準語)で、曲調も完璧な昭和歌謡だ。ここ、メカゴジラ登場シーンとは別の意味で見所(笑)。そのシュールさを、ぜひDVDで堪能して欲しい。

 甦ったキングシーサーと駆け付けたゴジラの2匹相手に、全身が兵器のメカゴジラは武装を全開! 雨あられと降り注ぐ光線とミサイルに地球の2大怪獣は大ピンチ! 死亡寸前のゴジラが、ここから大逆転するカタルシスは最高だ!

 さて、作品にはある違和感を覚える。それは、怪獣たちが暴れしているのに、いつになっても自衛隊が来ない。沖縄決戦でも在日米軍は来ない。この作品に限って怪獣映画のお約束である防衛軍が一切登場しないのだ。これは公開2年前に沖縄返還があったばかりという世情に配慮したらしい。その代わり、岸田森が扮するインターポールが活躍する。

 映画は大ヒットし、メカゴジラは以降のゴジラ作品に何度も登場する人気怪獣となる。ここからは、その輝かしいメカゴジラの戦歴を簡単に紹介しよう。


『メカゴジラの逆襲』(75年)
 ブラックホール第3惑星人の残党が、前作で破壊されたメカゴジラを改修し、恐竜の生き残りチタノザウルスを操りリベンジを企む。真船博士(平田昭彦)の一人娘は、父親の実験中の事故で死ぬが、ブラックホール第3惑星人によってサイボーグに改造。メカゴジラの操縦ユニットに接続されゴジラと戦わされるという、あんまりな話を書いたのはゴジラ映画唯一の女性脚本家・高山由起子。サイボーグ少女の両目が緑色に輝くと、伊福部昭の重厚な音楽をバックにメカゴジラ2号が起動、格納庫から出撃していくシーンには燃えた。

『ゴジラVSメカゴジラ』(93年)
 70年代に子供達のヒーローとなっていたゴジラが、原点回帰の悪役に戻った平成期、3代目メカゴジラは本作から設定された対ゴジラ用特殊部隊・Gフォースの主力兵器として復活。そして今回からメカゴジラには人が搭乗し、パイロット役に高島政宏、昭和ゴジラ作品に出演していた父・忠夫と共演。ヒロインは現・武豊夫人の佐野量子。昭和の名怪獣、ミニラとラドンが、リトルゴジラ、ファイヤーラドンとアレンジされて登場する。

『ゴジラ×メカゴジラ』(02年)
 今回のメカゴジラは、ゴジラの骨から取り出した遺伝子を組み込んだ生体ロボットとして製造され、「三式機竜」という名称が与えられる。だがゴジラの遺伝子が目覚め、機竜は制御不能となり暴走を始める。釈由美子が操縦するエヴァンゲリオン風メカゴジラ!

『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03年)
 モスラを加えた「機龍シリーズ」の続編。今回のヒロインパイロットは現在IZAMの恐妻・吉岡美穂。機龍の整備士には、戦隊番組『百獣戦隊ガオレンジャー』のレッドを演じた金子昇。そしてモスラと言えばザ・ピーナッツが好演していた双子の小人だが、ここではその1人を『世界の中心で、愛をさけぶ』でブレイクする直前の長澤まさみが演じている。


 これらに共通して言えるのは、完全にメカゴジラが主役のゴジラを食ってしまったことだ。2作目の『メカゴジラの逆襲』なんて、タイトルから主役の名が外されているし(汗)。このコラムが、冒頭で述べた2作品の鑑賞手引きとなれば幸いだ。

(文/天野ミチヒロ)

『ゴジラ対メカゴジラ』
1974年・東宝・84分
監督/福田純
脚本/山浦弘靖、福田純
出演/大門正明、青山一也、田島令子、ベルベラ・リーン、平田昭彦、岸田森ほか

おまけ①

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『ゴジラ対メカゴジラ』公開当時のパンフレット ※筆者私物

おまけ②

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『メカゴジラの逆襲』公開当時のパンフレット ※筆者私物

おまけ③

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攻撃態勢をとると、ピンッと立つ耳が可愛いキングシーサー(メーカー・少年リック) ※筆者私物

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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