連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第74回『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』公開50周年企画 <幻のゾンビ映画特集 PART-3>『ゾンビパパ』

『ゾンビパパ』VHS版 ジャケット

●ゾンビ映画の誕生
ゾンビとは元々、アフリカから中米ハイチに伝播したブードゥー呪術によって蘇らされ、農作業などに使役する罪人の死体を指す。そういった意味での世界初のゾンビ映画は『ホワイト・ゾンビ』(32年)だが、「人肉を食う。噛まれた者もゾンビになる。頭を破壊すれば停止する」といったお約束は、ジョージ・A・ロメロの3部作によって定義付けられた。
ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』(68年)、『ゾンビ』(78年)、『死霊のえじき』(85年)は、現在に至るまで無数に製作されてきたゾンビ映画の原典にして頂点を極め、それらはブードゥーのクラシカルなゾンビとは区別され「モダン・ゾンビ」と呼ばれている。
今年10月1日、モダン・ゾンビの先駆的な作品『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生』が公開50周年を迎えた。

◆◆◆

『ゾンビパパ』
1981年(92分・アメリカ)
監督/パトリック・レーガン
脚本/ロナルド・エイブラムス、パトリック・レーガンほか
出演/マリリン・バーンズ、ファビアン・フォート、ジョン・セダーほか
原題『KISS DADDY GOODBYE』

 80年代に低予算映画のビデオを量産していた船井電機のレーベルFUNAIが、レンタルビデオブームに「怪作」として爪痕を残した『ゾンビパパ』。不思議な響きのビデオタイトルだが、その内容も不思議な雰囲気。でもネット上では「退屈」などと総じて評価は低い。楽しく鑑賞した筆者の感性がおかしいのか? と感じた1本。

 避暑地の沿岸にある雑貨店の駐車場で、7、8歳の児童2人がフリスビーで遊んでいる。双子コーデのマイケルとベスは、まさに双子の兄妹。遠くへ落ちたフリスビーを、マイケルが見つめると「ヒュー」と飛んできて手元に戻る。店から出てきたパパが車のキーを出すと、ベスが「まかせておいて」と何も触らず開錠する。兄妹は超能力者だった。

 車を走らせながら「外で力を使ってはいけないと何度言った? 精神病院に行くか?」とパパの説教が始まる。筆者の家でも子供の頃、近所に世田谷区の某有名病院があったので、悪さすると親に同じことを言われたものだ。「医者が頭に針を刺してもいいのか?」というパパの言葉に、めっちゃビビッて平謝りする兄妹。夫婦共に心理学者のニコラスは、妻を白血病で亡くしたあと辞職。不思議な力を持つ子供たちを世間の目から隠すため郊外に引っ越し、学校に行かせず自ら勉強を教えていた。

 今日は月1回、学校へ行かない子供たちの視察に教育委員会からデニス先生が訪問する日だ。だが厄介なことに4人の暴走族が敷地に入り込み、庭の野天風呂を勝手に使い始める。銃を持ったニコラスが注意しに行くと、バンダナ巻いたデブにナイフで刺され、ノッポに銃を奪われ撃ち殺されてしまう。その様子を屋内の窓から見ている兄妹は「他人に力を見せるな」とパパから叱られたばかりなので我慢している(いいんだよ、ここは使って!)
 
 やがてデニス先生から「途中で車が故障したから明日行くね」と電話が入り、今日は来客がないと思った兄妹はパパの死体をサイコキネシス(念動力)で家の中へ運ぶ。するとマイケルは、パパの書棚から取り出した呪術の本を読みながら、パパの死体を蘇生させようとする。だがブードゥー魔術か何かを読んだのか、パパはゾンビとなってしまう。

 そこへ家主が滞納している家賃の催促に来る。飲酒運転で来た家主は態度が悪くて乱暴だったので、マイケルはゾンビパパを使って脅かす。血の気のないニコラスの顔には、マイケルがペイントした御まじないの文字。化け物みたいなニコラスに胸倉を掴み上げられた家主は、心臓が弱かったのでショック死する。その死体は2人のサイコキネシスで車ごと近くの湖に沈めてしまう。恐ろしい子供たちだ。

 ベス「パパをあのままにしておけないわ」。それが常識だ。警察などに届けて葬式も上げないと。しかし理由は「だって気持ち悪いわ」だった。父親が殺されたのに、まるで金魚が死んだような感じの兄妹。悲しみもせず涙も流さず、夜になると2人はいつものようにファミコンをして、仲良くお菓子を食べながらテレビを観るのであった。

 翌日、好戦的なマイケルはゾンビパパを使って悪者退治を始める。逃げた暴走族のカップルがビーチでイチャついていると、車で乗り付けたゾンビパパは、なぜか『トレマーズ』(89年)のミミズ怪獣のように地中を掘り進み、セックスしている2人の真下に来ると、砂から腕だけを出し両人の顔を砂浜に押し付けて窒息死させる。またビーチで兄妹が作った砂の城を、意地悪なサーファーたちが踏みつけて跡形もなくしてしまうと、ゾンビパパが車で彼らを追い回して脅す。

 さてデニス先生は保安官のトムに口説かれお泊りし、翌日に彼のマイカーを借りて兄妹の勉強を視に行く。このデニス役のマリリン・バーンズは、実はマニアにとっては大物。史上最恐ホラー『悪魔のいけにえ』(74年)で、レザー・フェイスから逃げ回るアノお姉さんだ。監督のトビー・フーパーと付き合っていたらしいが(笑)。

 2人は結局、パパが好きだった丘に死体を埋めることにする。マイケルはゾンビパパにツルハシとスコップで墓穴を掘らせる。埋葬が終わると、パパを殺した2人が兄妹の口封じにやってくる。そして子供たちの様子がおかしいと感じたデニスも戻って来る。暴走族は墓前で兄妹とデニスを殺そうとし、このピンチにマイケルが「ごめんパパ、もうひと仕事」と念じると、ゾンビパパがセミのように土中から這い出てきてノッポの首をへし折る。デブは自分の武器であるチェーンを首に巻き付けて悶絶している。デニスはデブに向かって念を送る兄妹を見て超能力に気付き、必死に叫んで止めさせる。そこへトムが到着し、バイクで逃げるデブを追いかけ射殺する(やだね、すぐ撃ち殺すアメリカって)。

 聞けば、死んだ母親も超能力者だという。そしてマイケルは「僕たちはもう大人に怒られることはない。大人は僕たちに何もできないんだ」。兄妹の将来が恐ろしい。トムが施設へ入ろうと言うと、マイケルとベスはテレパシーで何やら会話する。その頃パパの車のライトが点灯し、エンジンが掛かる......。

 ゾンビパパは人肉を食わず、奴隷として生まれたクラシック・ゾンビに近い。ツヤツヤしたブロンド髪の兄妹は、宇宙人が地球人に産ませた超能力少年少女たちで地球を侵略するSF映画の名作『未知空間の恐怖 光る眼』(60年)を、ちょっとだけ連想した。兄妹が大人になった続編を見てみたい。ちなみに、作品の雰囲気を決定づけている幼い兄妹は監督の実の子だという。

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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