第24回 『獣人ヒューアニマ』
- 『獣人ヒューアニマ』
原題『MEMORIAL DAY』
1989年・アメリカ・92分
監督/ロバート・C・ヒューズ
脚本/ロバート・C・ヒューズ、ジョージ・フランセス・スクロウ
出演/キャメロン・ミッチェル、ウイリアム・スミス、ジョン・メリー他
1年前のこのコラムは、夏休み特集ということでキャンプ物ホラー『レディ・ジェイソン 地獄のキャンプ』を紹介した。そこで今年もキャンプ物の珍作をお送りしよう。まずはビデオジャケットを、よ~く目を凝らして見てくれたまえ。ビッグフットみたいなイラストの周囲に「獣人獣人獣人獣人獣人」と、ラーメンどんぶりみたいな縁取りが意味不明だ。病んでるね、デザイナーさん。
そしてこのタイトル、ネット上で『獣人ヒューマニア』という誤記を見かけるが、『ヒューアニマ』なのでお間違いなく。原題が戦没者追悼記念日の意味を込めた『メモリアル・デー』と地味すぎるので、日本のビデオ会社宣伝部のお家芸(笑)によってデッチ上げられた、ヒューマンとアニマルの造語だ。なおビデオ時代に絶滅していたと思っていたら、いつのまにか『地獄のいけにえ 獣人ヒューマニア』というタイトルでDVD化されているではないか! なので今から鑑賞する方は、このコラムで結末を知らない方がよいだろう。監督は、戦隊ヒーロー『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のアメリカ版『パワーレンジャー』のロバート・C・ヒューズ。
自然環境豊かな峡谷メモリアル・バレーにキャンプ場がオープンする。責任者のジョージはベトナム戦争帰りの頑固オヤジだ。演じるのは、蜂の大群が人を襲う『スウォーム』(78年)や、『ニンジャリアン』(79年)、『必殺コマンド』(85年)などB級C級映画の常連、キャメロン・ミッチェル。そんなジョージには17年前、身代金目的で誘拐され、取引場所であるこの谷で行方不明になった息子がいた。ジョージはベトナムで培った追跡術を活かし、谷の管理人となって息子を捜す日々を送っていたのだ。
キャンプ場がオープンすると、殺された犬が井戸に投げ込まれ、連日キャンパーが殺害される。これは熊の仕業だと考えたジョージは、善悪の分別ができないチャラ男やビーチク浮いたノーブラ娘などのキャンパー達に、ライフルを持たせて熊討伐隊を組織する(すごいね、アメリカって)。だが犯人は原始人の格好をした人間で、その容貌は東宝怪獣映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(65年)のフランケンにそっくり(知らない人はネットで見てね)。ジャケットのイラストとは全然違うし(また騙された)。
このヒューアニマ君は普段は洞窟に棲んでいて、ゴミを捨てる、勝手に木を伐る、ラジカセでヘビメタを大音量で聞く、バイクで乗り入れるなど、自分の生息地を荒らすマナーの悪いキャンパーを、時にはブービートラップで、時には怪力でお仕置き(=殺害)していたのだ。いい年こいてゾクを卒業できないヘルスエンジェルスもどきを全滅。母親に溺愛される盗み癖のあるデブガキを棍棒でボコボコに撲殺。「殺さないで、何してもいいから」と、母親以外に生まれて初めて触る女性(ノーブラ娘)のオッパイをモミモミした挙句、ハグしたまま力加減を知らず背骨をボキッ。
ここで我らが管理人ジョージ、ついに朝焼けの中ヒュー君と対決! だがヒュー君は、ジョージの持ち物だった懐中時計を見せる。「おまえ、息子のスティーブか?」と17年ぶりに息子に対面するジョージ。ここで普通の作品なら親子が抱き合うのだが、そこはチンカス映画。ジョージが笑顔で息子に近付こうと歩み寄った瞬間、ヒュー君が仕掛けたブービートラップを踏んでしまい、先の尖った大木がビュンと飛んできてドテッ腹を貫通! オッサン即死。ヒュー君ア然とし、再び山へと引きこもってしまう。
騒ぎを聞いて駆け付けた警官が「犯人は必ず捕える」と誓うが、生存者の若者が「追跡の専門家でも捕まえられなかったんだから無理でしょう」と首を横に振り、誰もが諦めムードに意気消沈する......いや、捕まえなくちゃダメでしょ? 何人も殺しているのだから。でも物語はここで終了。自然を大事にしよう、って作品でした。