第21回 『ルパン三世 念力珍作戦』
- 『ルパン三世 念力珍作戦 [東宝DVDシネマファンクラブ]』
- 目黒祐樹///////,江崎英子,安西マリア,伊東四朗,ポピーズ,夏樹レナ,恵美,田中邦衛,坪島 孝
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8月30日に公開される実写版『ルパン三世』のキャスト・ビジュアルが、4月8日に公開されて話題を呼んだ。ルパン=小栗旬、次元大介=玉山鉄二、石川五ェ衛門=綾野剛、峰不二子=黒木メイサ(好みです)、銭形警部=浅野忠信。このキャスティングに賛否両論が飛び交っているが、特に「峰不二子は実写なら誰?」は男子永遠のテーマ。実写版『宇宙戦艦ヤマト』で森雪を演じた黒木メイサに再び注目だ。
さて、実は『ルパン三世』の実写化は2度目で、最初の作品は74年に製作されている。だが当時はほとんど話題にならなかった。なぜかというと、まず『ルパン三世』が誰でも知っている作品として定着したのは77年のアニメ第2シリーズ以降で、現在との認知度ギャップがあった。そして最大の要因は、併映が当時の大ベストセラーの映画化『ノストラダムスの大予言』だったからだ。日本全国民が「1999年に人類滅亡!」と脅かされていただけに、興味はソッチへ集中してしまっていたのだ。そんな元祖・実写版『ルパン三世』とはどんな作品だったのだろうか。
ルパンを演じるのは松方弘樹の実弟・目黒祐樹で、モミアゲはなく(小栗旬のルパンもモミアゲなし)1・9分けの髪形。首に巻いた白いスカーフと白いスーツ。所持する拳銃はワルサーP38ではなくワルサーPPK。目黒が監督と話し合って「原作を忠実に再現するのは無理だから、好きなようにやってみよう!」ということだったらしい。
冒頭、ルパンは盗んだ高級車で走行中、並んだ護送車の中にいる峰不二子に見惚れて前方の車にオカマを掘る。すると車から出てきた男が「人の性感帯、刺激して! お嫁に行けなくなっちゃうわ」とオカマだった(笑)......てな感じで始まる。クレージーキャッツ映画を演出した坪島孝監督による、完全なコメディ作品だったのだ。
そして護送車にいる囚人番号69696(シックスナイン?)・峰不二子は、江崎英子という知らない女優さん。ナマ足パンチラで頑張ってくれるが、ルックス的に黒木メイサの勝ち! 次元大介は田中邦衛で、ヒゲ面に帽子を目深く被ろうが、キャラが濃すぎて「田中邦衛」にしか見えない(笑)。銭形警部は伊東四朗とコッチも濃い。フランス市警からの手紙を署長が読み上げるのを聞きながら、フランス語のイントネーションに合わせて体をくねらす芸風は、電線音頭で一世を風靡した(知らないって?)伊東四朗の真骨頂! ゲストキャラも大物揃いで、ルパンの懐を狙う女スリに、今年3月に逝去した安西マリア。ルパンを狙う殺し屋には前川清と、当世の人気歌手を起用して楽しませてくれる。
さて、タイトルもそうだが、劇中でストーリーとは無関係に「念力」という台詞が使われ違和感を覚える。これは当時スプーン曲げのユリ・ゲラーがブームだったため「超能力を取り入れよ」という東宝からのお達しにより、後から脚本に「念力」という台詞を無理やりねじ込んだのだ。まあ、マンガ的表現による登場人物のあり得ない身体能力は、超能力みたいなものだが。
反面、原作に忠実なシーンもきちんと用意されている。ルパンとナンパした女との濡れ場に「刑法第七十五条(猥褻関連)によりカット」というテロップが出てきたかと思うと、2人の姿が男女を表す記号♂♀の線画アニメーションに変わり、ピストン運動を始める(笑)。あれ? そういえば石川五ェ門は......登場しなかった(泣)。
新作の監督は、既に漫画『あずみ』や『スカイハイ』を実写化し、『ゴジラ FINAL WARS』でゴジラファンの顰蹙を買い(監督だけのせいじゃないけど)、AKB48ファンには楽曲『鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥しい結論のようなもの』(長すぎるよ!)のミュージックビデオでお馴染みの北村龍平。まずはDVDで旧作を予習して、観比べてみよう。
『ルパン三世 念力珍作戦』
1974年/日本/82分
監督:坪島孝
脚本:長野洋
出演:目黒祐樹、江崎英子、田中邦衛、伊東四朗ほか