第23回 『巨大怪獣ザルコー』
- 『巨大怪獣ザルコー』
原題『ZARKORR! the INVADER』
1997年・アメリカ・79分
監督/アーロン・オズボーン
出演/リース・クリスチャン・ポー、デプライズ・グロスマン、トリー・リンチほか
※ビデオ廃盤
いよいよ『GODZILLA ゴジラ』の日本公開が迫ってきたが、98年のローランド・エメリッヒ版『GODZILLA』(以降エメゴジ)公開当時に、アメリカで製作された便乗作品が思い出される。それらを日本のビデオ会社が、『グジラ』(宇宙怪獣がエメゴジの看板を粉砕するシーンが笑える)、『ガジュラ』(エメゴジのイグアナに対抗したのか、カエルが化学汚染で怪獣に)なんて邦題でリリースしていた(原題は全然違う)。中でも「ゴジラだけじゃなかった!」とキャッチコピーも直球すぎる『巨大怪獣ザルコー』は、日本の怪獣マニアに割とウケがよかった作品だ。
開始早々3分で、カリフォルニア州郊外の山中から大怪獣ザルコーが出現。ザルコーは背ビレと長い尾を持つゴジラ型の二足歩行怪獣で、頭部には2本の角が生え、身長は昭和ゴジラと同じ50メートル。その頃、アニメ好きの冴えない郵便局員・トミーのアパートに、妖精のように小さな女の子が現れる。その子は『モスラ』でザ・ピーナッツが演じた役名「小美人」みたいな南方民族系スタイルではなく、白いブーツにミニスカ、ヘソ出しノースリーブ、ブロンドのツインテールと、米国オタク男子の妄想がたっぷり詰まった感じ(以後勝手に「小美少女」と命名)。
この小美少女は銀河連邦のメッセンジャーで、呆気にとられるトミーに「銀河連邦は、地球人として完全な平均的能力のアナタを、怪獣から地球を守る実験のサンプルに選んだの。アナタが失敗すれば地球は滅びるわ」と一方的に告げる。藤子不二雄の短編SFとかによくあるやつだ。さらに小美少女は「ザルコーは地球上のどんな軍隊でも核兵器でも倒せない。でもザルコーの倒し方を私達は教えない。じゃ、バーイ!」と言ってパッと消え、以降1度も登場しない(汗)。
慌てたトミーはテレビ局に急行し、報道番組で怪獣の解説をしていた女性博士に「協力して欲しい。エイリアンに会った。小さな少女の姿でテレパシーを......」。当然、メッチャ怯える博士。完全に不審者扱いのトミーは、駆け付けた警官達に「オレは狂っていない」と一部始終を話す。すると意外にも1人の警官が「俺はずっと宇宙人を信じていた」とパトカーにトミーを乗せて逃亡を幇助する。
一方ザルコーは、両目から怪光線を発射して町を破壊中。ミニチュアの建物が吹っ飛ぶシーンは迫力だが、ザルコーの背後にスタジオの白い壁が見え過ぎ(笑)。そして国防軍が出撃したと報道されるが、低予算ゆえ戦闘シーンはない。ラジオで「戦闘機のナパーム弾命中! 怪獣は炎に包まれました。一面火の海です。煙で何も見えません。怪獣は死ん......ジーザス・クライスト! 信じられません、まだ生きている! あ、目から光線発射! 戦闘機が次々に撃墜!」と、全部口頭で説明(笑)。
さて、トミー、博士、警官の3人は、アリゾナの小さな町でザルコー退治のキーとなる直径1メートルほどの円盤状物体を発見。それを得たトミーは、遂にザルコーと対峙するが、怪光線による爆発でダメージを受け大ピンチ。しかしトミーが頭上に掲げた円盤に反射した光線が、ザルコー自身に跳ね返る。ザルコーは消滅し、トミーの逆転勝利! 「ザーコー♪ ザーコー♪」とシャウトするロックがエンディングに鳴り響く。
ザルコーは『パシフィックリム』みたいな評判のよろしくないアメリカ製怪獣と違って日本的怪獣センスに溢れ、そのままウルトラマンと戦っても違和感はない。それもそのはず、ザルコーのスーツを作ったのは日本人。90年前後、お金持ち日系二世の日本特撮マニアが、等身大ヒーロー物に出てきそうな怪人のスーツを日本人造形師に依頼。カマキリ怪人、カジキ怪人など5体が製作され、そのうち一番怪獣っぽいドラゴン怪人が、巡り巡ってザルコーとしてデビューしたのだという。
この6月、『GODZILLA ゴジラ』公開に合わせて、54年の初代『ゴジラ』がデジタルリマスターで上映されたので観てきたが......感動! やっぱ怪獣映画は、大きなスクリーンで観るものだ。さて英語圏のゴジラファンの皆様、日本の怪獣を単なるMONSTERではなくKAIJYUと認識してくれたのと同様、そろそろGODZILLAを「ガッジーラ」ではなく、「GO・JI・RA」と日本式に発音して欲しい。それが日本怪獣リスペクターとしての流儀ですぞ。