第25回 『ナチ女収容所 続・悪魔の生体実験』
- 『ナチ女収容所 続・悪魔の生体実験』
原題『HORRIFYING EXPERIMENTS OF S.S. LAST DAYS』
1977年・イタリア・86分
監督/アイヴァン・カサンスキー
出演/マーシャ・マーガル、ジョン・ブラウン、キム・ガッティ他
大映ビデオ(廃盤)
1974年、ホルスタイン級の巨乳で有名なダイアン・ソーンが女看守イルザに扮した『ナチ女収容所 悪魔の生体実験』(カナダ)がヒットし、シリーズ化する。これに便乗したイタリア映画界は、ひたすらナチス将校が若い女性捕虜を強姦・拷問する、いわゆる「ナチもの」を量産。中でも、日本で『ナチ女収容所 続・悪魔の生体実験』という、限りなく続編に擬態した邦題で公開された作品があった。
粗筋は、ビデオのジャケットにこう書いてある。「第2次大戦中、第5ナチ収容所に生体実験用のグラマーな美女ばかりがトラックで運び込まれ、ナチス総統本部からの指令で実験台にされ殺されていく。だが、ある日ソ連軍が近くに侵攻してきたことを知った女達は手に銃を抱え、地獄の収容所を破壊し始めていく」。これを念頭にビデオをスタートすると、あり得ない結末が待ち受けていた! ストーリーではなく、観ていた私に。
ナチス強制収容所の研究室で、妖艶すぎる天才科学者ヘレン中尉によって人造人間(ドイツ軍が研究していた死なない兵士か?)が完成する。だが檻の中で唸っているソレは、ガッツ石松を毛深くしたような、ただのフルチンオヤジだった。そんな出来損ないでもヘレンはドヤ顔で、捕虜の女を次々と檻の中にぶち込み、人造人間がガシガシ強姦するのを舌なめずりしながら鑑賞。ここでヘレンは、直立不動でそれを見ている若い兵士のアソコも直立しているのに気付き、「たわけ! 第3帝国の兵士がみだりに興奮するな!」とビンタ一発(それもまた嬉しい兵士)。でも和訳が「たわけ」って......。
次にヘレンは、パルチザン(抵抗組織)のイケメン捕虜に「彼女と私とどっちがイイ?」と言ってフェラ(軍服半脱ぎがソソル)。勃起しないよう必死に耐えるイケメンに対し、隣に繋がれているブサメンがビンビンになり「俺にしてくれ! 死ぬ前にシャブってくれ~」と騒ぎ出し、ヘレンの逆鱗に触れてチンコをナイフでチョン切られる(笑)。さあ興の乗ってきた収容所、村から連行してきたパルチザンメンバーの恋人や姉妹に対し、女性器に電極を挿入、ペンチでナマ爪剥ぎなどの拷問ショーを展開する。
檻の中では相変わらず捕虜を強姦し続けている精力絶倫の人造人間だが、なんと女の股間から「ブチブチッ」と陰唇を指でむしり取って、それをムシャムシャ食べ始める! よくマン・イーター(人食い)と呼ばれるサメやライオンがいるが、コイツは別の意味でマン・イーターだ。ヘレンはヘアー付きマン肉を頬張っている人造人間に「オマエと私でヨーロッパを、世界を征服するのよ!」って、一体コイツでどうやって(汗)。と、そこへ突然パルチザン2名が殴り込み! そのドサクサに乗じて人造人間がヘレンを捕まえ、後ろから前からバッコンバッコン突っ込み始める。今までの気高さはどこへ行ったやら、みっともなく泣き叫ぶヘレン。「何だこりゃ?」と、その様子を呆気にとられて見ていたパルチザンは、ハッと我に返るや交尾したままの2人をマシンガンで蜂の巣に。ラストは、パルチザンの主導者である神父が、息子の死体を抱いたまま空爆される村の渦中へと消えていく......。
この作品、至極マジメで重厚なパルチザンの人間ドラマパートと、収容所のエログロ乱痴気パートが、フィルムの質感、カメラワークなど明らかに別物。低予算映画では「どうせ誰も観てないや」と、複数の作品のフッテージを繋ぎ合わせて1つの作品に仕立てることがよくある......って、そんなことより、ビデオジャケットに書いてあった粗筋と内容が違うぞ。監督名も俳優名も全て違う。おいおい、これ、別の映画だよ!
解説を依頼されたライターが怠慢こいてサンプル(商品になる前の試聴版)を観ずに、先述した日本公開された方の『ナチ女収容所 続・悪魔の生体実験』のビデオ化と勘違いしたとしか思えない。既存の邦題を付けた大映ビデオも酷いが、なんといい加減な、いや大らかなビデオ時代。ちなみに「ゲシュタポナチ女囚拷問ファイル ヘア無修正版」という5作品入りDVDボックスに、日本公開版が『美女集団監禁 ゲシュタポSM収容所』、人造人間の方が『獣人地獄! ナチ女収容所』の新タイトルで収録されているぞ。