第20回 『ザ・キャッチャー』
- 『ザ・キャッチャー』
原題『THE CATCHER』
1998年・アメリカ・77分
監督/イベット・ホフマン
出演/デビッド・ヒーブナー、モニーク・パレント、ジョー・エステベスほか
※ビデオ廃盤
球春到来! 2014年のプロ野球が開幕した。そしてファン最大の関心事は、メジャーリーグのヤンキースに入団したマー君こと田中将大であろう。ということで今回は、「アメリカ大(メジャー)リーグは、最悪のシーズンを迎えた」と、ビデオのキャッチコピーも仰々しい『ザ・キャッチャー』だ(未DVD化)。
シリアルキラー映画では、『悪魔のいけにえ』『13日の金曜日』『ハロウィン』と仮面の殺人鬼が有名だが、『ザ・キャッチャー』ではキャッチャーマスクを被ったユニフォーム姿の殺人鬼が登場する。野球では、刺殺・補殺・二死(ツーアウト)・死球(デッドボール)など物騒な専門用語が多く使用されているが、ここでは本当に「殺す」のだ!
1981年のカリフォルニア。庭でキャッチボールをする父子は、どこにでもある微笑ましい風景と思いきや、父親は全力投球の剛速球を幼いジョニーに投げつけ、捕球できない息子に「なぜ捕らん! あ~!?」と毎日のように虐待。全然楽しそうじゃないジョニーの目が、解体される直前の牛のように死んでいる。ある日、耐えきれなくなったジョニーは逆上し、実の父親をバットでボッコボコに殴殺する。ちなみに、この父親役のジョー・エステベスは、意図的か偶然か知らないが『メジャーリーグ』(89年)の主役チャーリー・シーンの叔父である。
それから17年後、町のご当地球団でマイナーリーグ(メジャーの下のリーグ)のデビルズは、シーズンを最下位で終了した。最終戦も負け、今シーズンの打率.101と酷すぎる成績でチームに迷惑を掛けたキャッチャーのウォーカーは、解雇寸前に追い込まれる。さらにメンバーに責められ、恋人からも「バイバイ」と別れを告げられる。
その夜、観客が帰った薄暗い球場施設内で惨劇は起きた。シャワーを浴びる選手、真っ暗なグラウンドの芝生上でセフレとイチャつく選手、ピッチングマシンを調整するコーチが、キャッチャーマスクを被った男にバットや怪力で次々と殺されていくのだ。アナウンサーまで狙われ、ホームベース上に固定され猛烈なスライディングで頭をスパイクされ首の骨がボキッ! そいつの背番号は、ウォーカーと同じ21番だ。
悲惨なのは球団職員テリー嬢の婚約者ビリー選手。謎のキャッチャーは、シャワーを浴びにきたビリーの口を粘着テープで塞ぎマッサージ台の上にうつ伏せにすると、バックからカマ掘り開始! ビリーが動かなくなり、キャッチャーのバットを見ると、グリップから40センチほど血で真っ赤! ビリーはバットで掘られていたのだ!
その頃、ようやく異変を感じたテリーは、球場の管理人から「昔、父親をバットで殴り殺したジョニーが戻ってきたのかも。今日が事件のあった日です」と聞かされる。やがてテリーはウォーカーに遭遇し逃げる。「違うんだ!」と追いかけるウォーカー。だがテリーの行く手にキャッチャー登場! てっきり「ウォーカー=成長したジョニー」と思っていたら別人で、娑婆に出てきたジョニーが狂って暴れていたのだ。
ラストは、グラウンドで21番同士がバットでチャンバラ開始。だがジョニーは凄~く強くて、ウォーカーもテリーも絶体絶命。するとここでジョニーに飛び掛って2人を救ったのは、意外にもグラウンドで殺された選手のセフレだった(生きていたのね)。この隙をついてテリーがバットでジョニーをカッキン! さらに動かなくなるまで顔面を連打! 勝利の女2人、肩を組みグランドから歩み去る。そこへ響く父親の笑い声。「息子よ、情けないぞ~女なんかに。ブザマだぞ~」で完。......えーっと、舞台はメジャーリーグじゃなかったよ!