「昔はゲームは叩かれた」ドラクエの作曲家・すぎやまこういち氏が25年を語る
- 『WiLL (マンスリーウィル) 増刊 すぎやまこういち ワンダーランド 2011年 12月号 [雑誌]』
- すぎやまこういち
- ワック出版局
- 1,008円(税込)
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1986年に、シリーズ1作目『ドラゴンクエスト』が登場してから25年。RPGの金字塔ともいえる同作品の出荷本数は、派生作品なども含め、5800万本になりました(2011年6月末)。25周年を記念した展示会「誕生25周年記念 ドラゴンクエスト展」が、森アーツセンターギャラリー(東京・六本木ヒルズ)で12月4日まで開催されており、連日、多くのファンが足を運んでいるようです。また、ドラクエコンサートのDVDが付いた、WiLL増刊『すぎやまこういち ワンダーランド』も話題を集めています。同書は、ドラゴンクエストの作曲を一貫して担当した、すぎやまこういち氏を特集した一冊です。
「昔はゲームは叩かれました。ある政治家は『ドラクエは敵を倒すからよくない』なんてトンチンカンなことを言っていました」
すぎやまこういち氏は同書のなかで、『ドラゴンクエスト』が生まれた頃をこう振り返っています。同じく、ドラクエのゲームシナリオデザインを担当した堀井雄二氏も、昔は本当にひどかったと言います。当時取材に訪れるのは、ゲームを敵対視しているような人ばかり。
「『こいつはゲームなんて悪いものを作っているヤツだ』と思っているのがミエミエで、やってくるなり、第一声が『やっぱりオタクなんですか?』(笑)。いまはだいぶ変わって、ドラクエを小さい頃からやっていましたという人が多いですが、一部ではいまだに先入観を引きずっていて、少年犯罪が起こると『殺人鬼の部屋にはゲームがあった。影響を受けていた』と報道されます」(堀井氏)
秋葉原の無差別殺傷事件で、犯人がダガーナイフを使用し、その後、ダガーナイフが規制されるようになりました。ドラゴンクエストにもダガーナイフという武器が出てくることから、けしからんと言われることもあったようです。
「ダガーナイフをなくせば犯罪がなくなるわけじゃない。その犯人は、もしダガーナイフがなくても別の刃物を使ったでしょう。そういう規制の仕方は、物事の本質を見ていないと思う」(堀井氏)
「出刃包丁を使った犯罪のほうが多いのに、規制しようという話にはなりませんからね」と、すぎやま氏も鋭く合わせます。「人間にとって、自分が知らないものは「悪」なんです。だから、知らない人がゲームを一所懸命やっている人をみたら、『一体、何をあんなに一生懸命になっているんだ。何か変だな』と思ってしまう」
新しい娯楽が登場すると、とりあえず叩かれるのが世の常。かつて少年講談が流行っては叩かれ、漫画が出てきて叩かれ、すぎやま氏が小学生の頃は、映画を観に行くのは不良と言われる時代でした。大昔に、本や音楽がはじめて登場した時も、同じように叩かれていたのかもしれません。「歴史が繰り返しているだけで、いまはゲームが言われているだけだ」と、すぎやま氏は言います。
ゲームの良さを理解して欲しいというのが、すぎやま氏や堀井氏の本音。しかし、5800万本を出荷した同作品。「ゲームは悪」といった評価は、少しずつ変化しているのかもしれません。