J-WAVE「BOOK BAR」×BOOKSTAND
紙も電子も愛し、奇書からギャグマンガまで読み耽る。誰もが気になる高城剛さんの本との付き合い方とは!?

「住所不定」「職業不明」の読書スタイルの原点とは

 今年、自著『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)を上梓した高城剛さん。この数年メディアからは「住所=スペイン、職業=ハイパーメディアクリエイター」という偏ったイメージが発信され続けてきた。だが、素顔の高城さんは世界中を拠点とする「住所不定」。手がける仕事は多岐にわたり、まさに「職業不明」にほかならない。

 「肩書きはなんでもいいんですよ。周囲とは違うのは今に始まったことじゃないし、違うこと自体は気にしていないんですよ。全国津々浦々ご存じのように『この人、なんか違うな』でいいんじゃないでしょうか(笑)」

 と、飄々と、しかし高速で語り倒す高城さんは「リビングに世界百科事典が並び、階段にまで書棚があった」ほど本好きだった両親のもとで育てられた。幼少時には『不思議の国のアリス』のような童話も好んでいたという。

 「大人になったいまもファンタジーで構築される世界観は大好きですよ。大人になって、読書の幅が広がりましたけどね。大きな転換点は、中学生の頃――1970年代に『POPEYE』のようなカタログ的カルチャー誌を読むようになったこと。そしてその源流の『Whole Earth Catalog』というアメリカのカルチャー誌が、ボクのなかで雑誌の金字塔として燦然と輝いているんです。その時代に必要なものだけでなく、未来まで視野に入れた上で網羅されていましたから」

 当時、ヒッピーカルチャーに傾倒した若者たち――例えばアップル社のスティーブ・ジョブズなどにも大きな影響を与えたという『Whole Earth Catalog』。その最終号は、宇宙から見た地球――つまりiPhoneの待ち受け画面そのものである。

 「ジョブズは『iPhoneこそが、21世紀の『Whole Earth Catalog』だ』と思っているんでしょう。でもあの雑誌の恐るべき完成度を考えると、21世紀版を名乗るならこの世に必要なすべてのものが手に入らなければならない。ボクはそういうモノを作りたい。そのためにも、今年は執筆に力を入れようと思っています。インクを紙に刷る、アナログの本が出せるうちに一生懸命書いておこうかなって(笑)」

 先端を感じさせる香りには、いつも敏感だ。中高生の頃『POPEYE』のほか『すすめ!! パイレーツ』(江口寿史)、『マカロニほうれん荘』(鴨川つばめ)などのギャグマンガも貪った。

 「SFモノだと『コブラ』(寺沢武一)なんて、中学の頃読んでときめいたなあ(笑)。当時は、フィリップ・K・ディックの『ヴァリス』も好きでした。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』なんて今も大好きだし、その映画化作品の『ブレードランナー』の世界観もすごくいい。あ、ちなみに『ブレードランナー』ってタイトルはウィリアム・バロウズの著作から取ってるんだよね。語感がいいというだけの理由らしいけど」

iPadに入れたい本、収めたくない本 
 
 世界中を飛び回る「住所不定」の高城さんにとって、いまもっとも文字を読むデバイスは紙の本ではなく、iPadだという。情報コンテンツとしての本――、つまりデジタルだろうとアナログだろうと、注ぐ愛情が変わらない本はデジタル化してしまうというのだ。

 「以前、紙の本を10万冊持っていたこともありますが、その量になると読まない本も出てくる。そこで思いきって処分することにしたんです。マンガのようにコンテンツに価値があるものはすべて断裁してスキャン――つまり「自炊」してiPadに取り込んでいます。事務所には超高い自炊用高性能マシンがあってね。詰まらなければ、一冊30秒でイケるんですよ(笑)。ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』の新訳の青山南さん版から、週刊少年ジャンプの『ワンピース』の最新刊まで全世界どこにいても読める(笑)。一方で装幀など手で触れ、紙で持っておきたいプロダクツとしての本もある。元関西学院大学の植島啓司さんが書いた『心コレクション』などは装幀が素晴らしくて、思わず二冊買いしてしまいました」

 二冊買いするものは、一冊は純粋にそのコンテンツを楽しむために、自炊して旅行中に読む。もう一冊はプロダクツとして、手触りや質感とともに楽しむためにそのまま持っておき、時には好きな誰かにプレゼントすることも。そうして、モノとしての価値を十全に味わい尽くすというのだ。

 「そうそう、本をプレゼントする4月23日のサン・ジョルディの日って、スペインのカタルーニャ地方で始まった風習なんですが、その日はカタルーニャのストリートがすべて書店になる。楽しくて、朝から晩まで一日うろうろしています。もともと規模の大小や世間の評価とは関係ない視点で書店を見てますから。ほとんど、通りがかりと行きがかりの直感任せ(笑)。だからか、ロンドンやニューヨークの行きつけの本屋に行くと、店主がつかつかとやってきて『お前はこの本が好きに違いない』って押しつけられる(笑)」

 日本に帰国すると、書店のスピリチュアルコーナーで、日本のパワースポットや神社神道関連の書籍を買い漁る。かと思えば、コンビニで「裏モノ系」のペーパーバックコミックスをカゴに放り込む。

 「書店の好き嫌いは確かにあるけど、売り場差別はしないんです。書店でも、路上でも、アマゾンでも、世界中のどこにでも本との素敵な出会いは転がっている。なーんて言うといい感じじゃないですか(笑)。でもマジメな話、ボクにとって読書とは、一冊のなかに無限に圧縮された、壮大な行間を読む行為。書き手が圧縮したエネルギーを読み手のボクが解凍する。その行為が気持ちいいんです。だから複雑怪奇な作品だって好きですよ。夢野久作の『ドグラマグラ』とかね」

 住所や肩書きに囚われないのだから、好きな本や書店、読書スタイルに囚われるわけがない。インタビューの最後に、高城さんはこう付け加えた。

 「持ち方や読み方は変わったけど、本はボクにとって永遠の友達です」

 プロダクツとしての本もコンテンツとしての本も愛する男がハッキリと言い切った「永遠」という言葉。囚われない男が口にしたその言葉には重みがある。

 文・松浦達也

<プロフィール>
たかしろ・つよし●1964年東京都生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオ・ビエンナーレ」でグランプリを受賞。総務省情報通信審議会専門委員など要職を歴任し、六本木ヒルズのCM、ルイ・ヴィトンのためのジャパニメーションのプロデュースなど、多方面で活躍。近著『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)、『オーガニック革命』(集英社新書)など著書多数

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