【トンデモから健康まで。織田哲郎さんの意外な読書傾向】【アノヒトの読書遍歴】織田哲郎さん（後編）

トンデモから健康まで。織田哲郎さんの意外な読書傾向

　「いわゆるトンデモと呼ばれる系。腐るほど持ってますよ」
　
　織田哲郎とトンデモ本。ちょっと意外な組み合わせ。高校卒業後、音楽の世界に入った織田さんが吸い込まれていったのは、それでも確かにトンデモの世界だった。

　「小説はパタッと読まなくなりましたが、"腑に落ちる"という感覚は相変わらず求めていたんです。ただ、小説のような人の心情的な部分でその感覚を得ることに、あまり興味がなくなったんですね。それよりは、この世の中、宇宙、自分の人生や時間。そういうものの仕組みを自分なりに構築することの方に興味がいった。ただそれも、自分が腑に落ちればいいだけなので、ちゃんとした論理である必要すらなくて。そういうものを求めての読書が増えるなかでの、トンデモ（笑）」
　
　織田さん、覚醒したんですか？

　「いや。トンデモ系は好きだけど、すぐ真に受けるようなタイプではないですから。でも、そもそも今の科学が全てを解明しているわけないのに、科学で説明がつかないことは全部トンデモだカルトだって言う人がいるでしょう。そういう人たちが言うことよりは、いわゆるトンデモ系の本の方がためになる部分がいっぱいあると思います」
　
　確かに、もっとも過ぎる。

　「まぁでも、だいたい本当にトンデモなんですけど（笑）。本なんか出してないで早く入院した方がよさそうなものとか、いっぱいありますよ。でもね、それはそれでギャグとしても楽しめるから。それにある意味、今量子論とかで言ってることだって、普通の人間の常識でいえばトンデモがかった話なわけだから。そう考えると、ヤバいと思ってた本が、50年ぐらい経ったら評価されてるかも知れないし。それはわからないですよね」
　
　トンデモ本を研究している「と学会」の本は、今も楽しみに買っている。「この本俺も持ってたよ！」という本がよく出てくるらしい。
　
　ところで前回、毎日コンビニで4〜5冊は本を買っていると話していた織田さんだが、いったいどんな本を買っているのだろう？

　「発刊された頃から愛読している『ニュートン』などの宇宙物理系や、実用系が多いですね。デザインや車の本、家具や建築の本も好きですし。あとは健康系。これも玉石混淆で、本当にどうしようもない本から、なかなか役に立つ本までいろいろなんですけど。......ある意味生きているということは、自分の体を使って人体実験をできるわけじゃないですか」
　
　と、言いますと？

　「いろんな健康本のなかで、これは試してみようというのを自分で実験してみるのが好きなんです。意思が固いと言われることもあるんだけど、そんなんじゃなくて、研究材料としての自分で実験をすることが楽しいんです」
　
　少し変わった趣味かも知れないが、実際に25歳の頃から始めた"肉を基本的に食べない"という実験は今も続いていて、結果はかなり良好だそう。他にも、自分なりの体操のやり方を20年ほど追求していたりもする。ちなみに、数々の健康本を読んできた織田さんのおすすめ本は？

　「免疫系の本をたくさん出されている安保徹さん。安保先生の本は、基本的に"そうですよねぇ"と思いながら読めるんです。ただ、健康が目的ではないので、生活はものすごく不健康なんですよ。だから逆にいうと、ずーっと不健康な生活をしていけるように、健康でいないとって。不健康な生活というのは相当健康じゃないと辛いですからね」
　
　織田さん流の楽しみ方に触れ、トンデモ本や健康系実用書に俄然興味が湧いてきた。

織田哲郎（おだ・てつろう）
ミュージシャン、音楽プロデューサー。1958年、東京都生まれ。13歳で渡英し、中学時代をロンドンで過ごす。帰国後、高知での寮生活だった高校時代にバンドを組み、オリジナル曲の創作を開始。1978年からプロとして活動を始める。TUBEや大黒摩季、ZARDなどへの楽曲提供で数多くのミリオンセラーを生み出し、自身もソロ・アーティストとして発表した『いつまでも変わらぬ愛を』で大ヒットを記録した。日本を代表する音楽プロデューサー、ミュージシャンとして活躍し続けている

取材・文＝根本美保子