羽生善治九段に「急戦模様で戦う」 斎藤慎太郎 八段の宣言

左/羽生善治 九段、右/斎藤慎太郎 八段 撮影:河井邦彦
第70回NHK杯準々決勝第4局は、羽生善治(はぶ・よしはる)九段と、斎藤慎太郎(さいとう・しんたろう)八段の対局となった。小田尚英さんの観戦記から、序盤の展開をお伝えする。


* * *


■急戦模様を宣言

斎藤は羽生のことを「誰もが知っている偉大な棋士。対戦するのが楽しみ」と事前のインタビューで話した。斎藤が将棋に出会ったのは学習塾に置いてあった羽生の入門書を通じてであり、初めてのタイトル戦の相手も羽生。準々決勝で当たる今回は強い気持ちで臨んだ。「本局は急戦模様で戦おうと予定しております」。堂々たる宣言だ。
50歳になった羽生。竜王戦七番勝負を解説の豊島将之竜王と戦うなど伝説はまだまだ継続中。NHK杯本戦出場35回目で優勝11回は「突出した成績」(豊島)で、今回は渡辺明名人を倒しての進出。
「斎藤さんは非常に手厚い攻め将棋。持ち時間が短いのでメリハリをつけて考える」と、いつもの自然体で語っていた。
豊島は見どころを「羽生九段は中盤の大局観が持ち味、斎藤八段は読みが正確。序盤でどちらがペースを握るか」とした。
ベスト4最後の席を争う戦いは矢倉の出だし。斎藤は早い△6四歩~△7三桂で宣言どおりの布陣。羽生の△6八角は△6五桂をあらかじめ受けたもの。そして斎藤が「作戦」と言ったのが△6五歩(2図)だった。


■角換わり風

斎藤の急戦宣言について、三段時代から1対1の研究会をしている豊島は、「オールラウンダーの羽生さんにすべて急戦を用意するのは大変。自信と充実ぶりが出ている」と語る。斎藤は新参加のA級順位戦も好調で「棋風は変わらず全体的に強くなっている」(豊島)という。
羽生は△3五歩から歩交換。△6八角と備えていたので結果的に1手損である。矢倉の定型に囲った先手に対して、斎藤は△6二金~△8一飛と角換わりのような構えを採る。豊島は、「この型は玉がどこにいても安定する」という。本譜は△5二玉。矢倉戦は進化している。

■銀のタイミング

ゆっくりしていると手損のマイナスが出てくるので、羽生は動く。3図から△5五歩。

△5五同角の局面では後手から△8六歩△同銀△4四銀△4六角△2二角と、角をこちらに使う筋が見える。が、斎藤は焦らず単に△4四銀。後手も陣形を「どうまとめていくかが難しい」(豊島)のだ。
先手は3七銀を活用したい。いつ△3六銀とするか。3図で△3六銀もあった。以下△4四銀△2四歩△同歩△同飛△5三角は両者とも怖い。4図からだと△3六銀△8六歩△同銀△2二角△9八玉△9五歩△5八飛。これも難しい戦いとなる。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2021年4月号より

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