上野梨紗初段が姉妹対決で見せた負けん気の強さ

右/上野愛咲美女流最強位、左/上野梨紗初段 撮影:小松士郎
観戦記者だからこそ垣間見ることのできる棋士の側面を綴る人気コラム「観戦記者の独り言」。4月号は、上野愛咲美女流最強位と上野梨紗初段の姉妹対決を取材した村上 深さんが担当します。

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昨年12月5日、6日に行われた「国際アマチュア・ペア碁選手権大会」は久しぶりのイベント取材となりました。例年は併設のハンデ戦も含めると数百人が集う、囲碁界の中でも最も華やかなイベントの一つなのですが、今回は必要最低限のイベントのみでこぢんまりと開催されました。
特別併催イベントとして、ペア碁俊英トーナメント戦も実施されました。有望な若手棋士がひしめく中、やはり注目の的は仲邑菫初段。しかし、初戦で優勝ペアの福岡航太朗初段・上野梨紗初段ペアに敗退。他にも張栩九段の息女である張小澄初段や羽根直樹九段の息女である羽根彩夏初段らが次々と姿を消していきました。
優勝の特典として芝野虎丸王座・上野愛咲美女流最強位との記念対局も行われました。期せずして上野姉妹対決が実現したわけですが、ここでは姉の貫禄勝ち。
局後のインタビューで妹の梨紗初段に「お姉さんは強かったですか?」と質問が飛びましたが「うーん…まぁあんまりそうとも思わなかったですけど…」との回答で、負けん気の強さに僕は笑ってしまいました。考えてみれば、偉大な姉は身近で最もライバル心を抱く存在。14歳の少女が「そうですね、強かったです」と言うほうが不自然ですよね。囲碁に限りませんが、兄弟で勝負事をやっていると、下の子のほうが大成するという俗説があります。ひょっとすると、梨紗初段は愛咲美お姉ちゃんを目標に、さらに高く羽ばたく逸材かもしれません。
※段位・タイトルはテキスト発売当時のものです。
■『NHK囲碁講座』連載「観戦記者の独り言」2021年4月号より

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