肩こりの原因にもなるストレスを上手に解消しよう

日常生活の中で感じるストレスは肩まわりの筋肉を緊張させ、血流を悪くし、肩こりの大きな原因となります。東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座長、特任教授の松平 浩(まつだいら・こう)さんが、ストレスへの対処法を教えてくれました。

* * *


■ストレスから起こる脳機能と自律神経系の不具合

「楽しい」「心地よい」と感じているとき、私たちの頭の中ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは、わかりやすく「幸福ホルモン」「快楽ホルモン」とも呼ばれる物質です(厳密には、ホルモンではありません)。逆に、不安や不満、恐怖といったストレスの多い状態や否定的な感情の強い状態が続くと、ドーパミンが分泌されにくくなります。
ドーパミンの分泌低下は、セロトニンという神経伝達物質(もう1つの「幸福ホルモン」)の分泌低下をももたらします。セロトニンは感情のコントロールに関わって心のバランスを整える作用があり、睡眠の質やリズムに関与するメラトニンというホルモンの材料にもなります。このため、セロトニンが不足すると気分が沈んだり、睡眠障害に見舞われたりします。これが「ストレスによる脳機能の不具合」です。
ストレスによる脳機能の不具合が起こると、自律神経系のバランスも乱れて、頭痛、動悸(どうき) 、胃腸の不調、手足の冷えなどの症状が現れます。肩こりや腰痛も起こります。このように体に現れるストレス反応を「身体化徴候」と呼びますが、身体化徴候がさらにストレスとなって痛みを抑制できなくなり、全身的な体調不良を引き起こすという悪循環もみられます。

■ワクワクすることやリズミカルな運動を

このように、ストレスの多い状態は脳機能と自律神経系の不具合をもたらし、肩こりや睡眠障害を含むさまざまな不調を呼び起こします。「家族とけんかした」「仕事で無理難題を言われた」など、日常生活にはイライラすることがたくさんありますね。こういった気持ちをできるだけ引きずらず、なるべく早くこの感情から離れるようにしましょう。
たとえば、好きな音楽を聴いてワクワクしているときはドーパミンが分泌されることが科学的に明らかにされています。イライラするときや不安なときは、好きな音楽を聴いてドーパミンの分泌を促し、脳機能の不具合を調整するとよいでしょう。音楽のジャンルは問いません。好きな音楽、心地よいと感じられる音楽であればいいのです。子育てで余裕がないとき、重要な仕事の前で緊張しているときこそ、心地よい、ワクワクするような音楽を聴いてみてください。
また、リズム運動を一定時間継続するとセロトニンの分泌が増えることが、研究から明らかにされています。ウォーキング、サイクリングといった日々の生活に取り入れやすいリズミカルな運動を習慣にしていきましょう。
いずれも、自分が心地よいと思えることが大切です。音楽を聴いたり、リズミカルな運動をしたりすることによって、ドーパミンやセロトニンの分泌を意識的に行い、ストレスに打たれ強くなりましょう。
■『NHKまる得マガジン 毎日できる 簡単肩こり体操』より

NHKテキストVIEW

毎日できる 簡単肩こり体操 (NHKまる得マガジン)
『毎日できる 簡単肩こり体操 (NHKまる得マガジン)』
NHK出版
617円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> HMV&BOOKS

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム