もはや普通の社会人に家は買えない!? 急激な価格高騰の真相に迫る!

- 『なぜ働いても家を買えないのか (日経プレミアシリーズ)』
- 外山尚之
- 日経BP 日本経済新聞出版
- 1,100円(税込)

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「マイホームは一生の買い物」とはよく言われたものですが、今後はそんな言葉も聞かれなくなるかもしれません。現在、多くの人にとって「買いたくても買えない」という状況が現実のものとなっているからです。不動産経済研究所によると、2025年の東京23区の新築マンションの平均価格は前年比21.8%増となる1億3613万円で、過去最高値を更新。この10年で約2倍という急激な価格上昇となっています。
なぜ、家はこれほどまで普通の社会人にとって手が届かないものになってしまったのでしょうか。「この問いに対して、記者として見聞きした取材結果をまとめ、現在の日本で何が起こっているのかを共有できれば」という思いで書かれたのが、日本経済新聞社の外山尚之氏による『なぜ働いても家を買えないのか』です。
マンション価格上昇のきっかけの一つと言えるのが、2012年12月に誕生した第2次安倍政権による経済政策「アベノミクス」の金融緩和です。これによりマンション価格が上昇する状況が続くようになると、将来的な売却を見据えた「半投半住(半分投資、半分居住)」が一つのブームとなり、都市部のマンション価格をさらに押し上げることとなりました。
また、都心と郊外のマンション相場の価格差が拡大している背景として挙げられるのが、夫婦ともにフルタイムで働く「パワーカップル」の存在です。共働き世帯がオフィスからの距離や時間を最優先にして住宅を選ぶようになったことで、都内では急激に人気が高まったエリアもあります。共働きの拡大とペアローンの普及によって、「予算の上限が上がるというサイクルが、都心部の不動産価格の上昇のメインエンジンになっている」(本書より)そうです。
ほかにも、投資家やタワマン転売ヤーの参戦、海外マネーの流入、資材価格の高騰、マンション用地の争奪戦など、さまざまな要因が複雑に絡み合って、働いても手が届かないような相場になったと外山氏は推察します。
では、そのような中で、限られた予算内でマイホームを求める人々はどうしているのでしょうか。本書では狭小戸建て、リノベされた築古マンション、埼玉県や千葉県といった郊外居住を選んだ人々などを取材し、さまざまな事例を紹介しています。
また、住宅価格高騰の震源地でもある東京都では、市場価格より2割程度安い家賃で住める「アフォーダブル住宅」の供給を2026年度から開始。今後、ファミリー世帯の住まい確保と住環境の向上に向けた行政の施策にも期待がかかるところです。
東京23区の新築マンションが平均1億円を超えるような時代であっても、「ライフスタイルに合わせて住む場所や居住形態を柔軟に変えながら、それぞれの『答え』を手探りで探して行くことを『正解』にできるようなしなやかな社会に変えていく必要がある。さもなければ、社会そのものが、住宅価格の高騰で自沈していくだけだろう」(本書より)と結んでいる外山氏。本書は住宅価格高騰の本質に迫るとともに、その中での現実解を示す一冊となっています。
[文・鷺ノ宮やよい]
