テレビ番組でも人気の犯罪心理学者が教える、よりよい親子関係を築く声かけ&子育て法

犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 (SB新書)
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉 (SB新書)』
出口保行
SBクリエイティブ
990円(税込)
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 ニュース番組で解説をおこなうほか、『全力!脱力タイムズ』や『ナカイの窓』などのバラエティ番組への出演でも知られる犯罪心理学者の出口保行さん。これまで少年鑑別所や刑務所などで1万人を超える犯罪者・非行少年の心理分析をおこなってきました。その中で、「親がよかれと思って投げかけた言葉が『呪いの言葉』となって子どもの未来を壊してしまう」ケースを数多く目にしてきたといいます。

 そんな出口さんが、これまでの経験をもとに特徴的な「呪いの言葉」を集め、より良い子育て・教育につながる声かけをまとめた一冊が『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』です。

 第1章から第6章までの各章の冒頭に掲載されているのは、守秘義務があるためフィクションにはなっていますが、少年少女による犯罪や非行の事例です。たとえば第2章で紹介されているのは、勤務する会社の金の約300万円を恋人の借金返済のために自身の銀行口座へ振り込んで業務上横領の罪を犯したユカのケース。小さいころから両親が営む鮮魚店を手伝っていた彼女は、常に父からあれこれと急かされ、将来の夢や目標を持つことなく、目先のことをどうするかばかり考える毎日を送ってきました。そのため現在の行動がどのような結果になるのかを考える「事前予見能力」が育たず、結果的にこうした短絡的・刹那的な行動につながったと出口さんは指摘します。

 日常の場面で「早くしなさい」「さっさと片付けなさい」など、子どもを急かす声かけをおこなう親も多いですが、事前予見能力が育っていない子どもには、なぜ急がなければいけないのかがわかりません。急ぐべき理由をきちんと伝え、「目的から逆算して現在の行動を考える」という訓練を積ませることが、自律的に生きる子どもを育てるには大切なのだそうです。

 ちなみに、この事前予見能力、すなわち「先読み力」が天才的にあると出口さんが感じる人物は、バラエティ番組のMCたち。予定調和をよしとせず、一手、二手先よりもっと先を読むMCたちの中には、実はものすごい読書家もいるそうです。さまざまな疑似体験ができる読書は、先読み力のバリエーションを増やすのに非常に役立つことがわかるエピソードだと言えます。

 「早くしなさい」のほかにも、「みんなと仲良く」「頑張りなさい」「気をつけて!」など、親が子どもにかけるお決まりの言葉のなかには、親の都合に過ぎない場合も多いと同書を読むと気づかされます。出口さんが言うとおり、子どもは「言葉では『あなたのためを思って』と言っていても、親自身の保身や世間体のために言っていればすぐにわかる」(同書より)もの。親子のよい信頼関係の築き方を模索している人にとって、同書は参考になるポイントがたくさん詰まった一冊なのではないでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]

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