清原逮捕にあの大物はどう思う!? 今こそ振り返りたい平成の名勝負「清原vs.野茂」

近鉄バファローズの時代 (知的発見! BOOKS)
『近鉄バファローズの時代 (知的発見! BOOKS)』
イースト・プレス
1,000円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> LawsonHMV

 2月2日、覚せい剤所持の現行犯で逮捕された元プロ野球選手の清原和博容疑者。彼は逮捕前の1月11日、ヤフオクドームで開催されたイベント「名球会ベースボールフェスティバル 2016」に出場していました。このとき、テレビ各局は清原容疑者が自身の携帯電話を使い、野茂英雄投手のトルネード投法を撮影したシーンを放送。それを見た人は、平成の名勝負とされる「清原vs.野茂」を思い出したかもしれません。

 数々の名勝負を繰り広げた両者。実は、野茂投手がプロ入り後、初めて三振を奪った相手こそ、清原容疑者でした。

 書籍『近鉄バファローズの時代』には、西武ライオンズを相手とした野茂投手のデビュー戦について次のように記されています。

「初回、先頭の辻発彦にフォアボール。二番の平野謙の送りバントは自らがファンブルし、三番の秋山幸二にまたもフォアボール......。ノーヒットでノーアウト満塁のピンチを迎え、バッターボックスには四番の清原和博。カウントは2−1(註・当時のカウント方法で2ストライク、1ボール)、3球ともすべてストレートだ。そして4球目。野茂はフォークではなく、またしてもストレートを投げ込む。ググッと手元で伸びたボールに対し、清原のバットは大きく空を切った」

 野茂投手は、清原容疑者との最初の対戦で、4球すべて直球を選択。後にアメリカへ渡り、メジャーリーガーをも打ち取ったフォークボールを、なぜこのときは投げなかったのでしょうか?

 その理由として、野茂投手はこうコメントしています。

"清原さんに対して全部ストレートで勝負に行って、三振を取ることができました。これがプロの勝負なんだぁ。力と力の勝負ができることがいいんです"

"ストレートを待ってる打者に、なぜストレートを投げるのか? 力で来る打者には力で行かなければいけない。それが野球なんです"

 この1990年シーズンの「清原vs.野茂」は25打数10安打(.400)3本塁打という結果となり、数字の上では"清原優勢"といえます。しかし、この名勝負には数字には表れない男と男の美学があり、ふたりにとっては単純に優劣を決めることができないものだったのかもしれません。

 
 今回の事件に関して、野茂投手はなにを思うのでしょうか。ファンやチームメイト、または対戦相手だった選手達とは違った別の感情が芽生えているのかもしれません。

 レジェンドクラスの超一流投手の真っ向勝負に、フルスイングで応えたかつての大打者の変わり果てた姿。今後、清原容疑者が社会復帰を果たした時、薬物や裏社会との付き合いを断つことを願うばかりです。

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム