どうしてトンデモ陰謀論は拡散するのか

世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ (講談社現代新書)
『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ (講談社現代新書)』
辻 隆太朗
講談社
842円(税込)
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 この夏、日本列島を震撼させたデング熱騒動ですが、TwitterやFacebook 等のSNSで、以下のような話を目にした方も多いのではないでしょうか?

"デング熱ワクチンを開発した製薬会社が、代々木公園に蚊を放った"
"実は、代々木公園を会場に開催予定の反原発デモを潰すための工作だ"
"去年は249人、今年は81人しか発症していないのに、今年になってからこんなにマスコミが騒ぐのは変。何かを隠匿するために、国民の目をデング熱に向けさせているのでは"

 いわゆる陰謀論というやつです。

 今月6日には、タレントの板尾創路さんが自身のTwitterに「TVの仕事をしてる私が言うのも変ですがニュース番組であっても鵜呑みしてはいけません。冷静に自分の身は自分で守ってください!政府というのは恐ろしいです...」と投稿し、物議を醸しました。本人はネタのつもりで言っているのかもしれませんが、それを真に受けた人もいたようです。

 なお、デング熱陰謀論の根拠として一番もっともらしいものは「発症例は昨年249人に対し、今年はまだ81人なのに...」という話。たしかに一見、今年だけ騒ぐのはおかしいという気がしないでもありません。しかし、これだけの騒ぎになった理由は「戦後初の国内発生」だからです。昨年の発症人数は249人ですが、「国内発生」は0人。戦後、0人だった症例が、今年になって初めて発生したのですから、これだけの騒ぎになったわけですし、また感染場所と考えられる代々木公園が封鎖されるのも当然のことだと考えるのが妥当でしょう。

 デング熱騒動に限らず陰謀論というものは、事実をもとにもっともらしくストーリー付けしているものの、落ち着いて調べれば荒唐無稽なデマとわかるはずです。しかし、インターネット社会になり、あらゆる情報を手軽に入手できるようになった現代においても、陰謀論がなくなることはありません。いや、むしろ近年、増えているのでないでしょうか。

「3.11は米軍の"地震兵器"が引き起こした」
「日本政府と東京電力は国民を見殺しにして放射能汚染を放置している」
「ペットボトルのお茶に使用されているのはゴミ同然の茎部分で、防腐剤もたっぷり入っているので飲むべきものではない」

 一般的な感覚でいうと、「そんなわけないじゃないですか」のひとことで終わりそうなこれらのネタにも飛びつく人がいるのです。一体なぜ、このような陰謀論が生まれ、広められてしまうのでしょうか?

 書籍『世界の陰謀説を読み解く』の著者・辻隆太朗さんは、第六章『陰謀論の論理――なぜ私たちは陰謀論を求めるのか』で、陰謀論には「社会に対する不満や不安」が背景にあると述べています。今回のデング熱騒動で言えば、情報不足に対する不満や、デング熱の無理解による不安が背景にあったようです。

 辻さんは、陰謀論者は、自らを「愚かな人びとに石を投げられながら正義と真実のために闘う孤独なヒーロー」と思いこんでいると指摘しています。これはつまり、"誰も知らない真実を知っているのは、自分だけだ"という優越感や"愚かな大衆に真実を知らしめねば"という使命感に駆られている心理状態と言えます。今回のデマも「周囲の人に知らせなくては!」と注意喚起のために、切迫感に駆り立てられてシェアした方も多かったのではないでしょうか。発信元も確認せずに即シェアする行為は、このような陰謀論者の片棒を担ぐ事態になり兼ねません。

 辻さんも「自身の発する情報の正確性や質には可能な範囲で責任をもつべきである」と述べています。情報が本当に正しいのかどうか、シェアする前に出典及び根拠を確かめる―――陰謀論の拡散を防ぐためには、多くの人がこの"基本動作"を取る必要があるのではないでしょうか。

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